青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ウディ・アレン『ミッドナイト・イン・パリ』

ウディ・アレンミッドナイト・イン・パリ』を観た。

監督歴50年にしてキャリア最大のヒットという驚きの1作。面白かったけども、これが彼の最高の1本ではないと思いますけどね。最近のさして評判のよくない『タロットカード殺人事件』も『人生万歳!』も僕は好きです。誰だってそうだと思うが、結局は『アニーホール』『マンハッタン』『インテリア』『カイロの紫のバラ』『ハンナとその姉妹』あたりの70年代後半から80年代後半が彼の黄金期であり、あの頃の作品群が毎年劇場で公開される喜びを享受したかったなぁ、てなものなのですが、そんな事を言うと今作のアレンには怒られてしまう。2010年のオーウェン・ウィルソン演じるギルは1920年代に憧れ、1920年代の住人は19世紀に想いを馳せている。いつの時代もそうだよね、って話なのだ。1920年代にタイムスリップしたオーウェン・ウィルソンフィッツジェラルドやへミングウェイやピカソやダリらの当時の偉大なるアーティスト等に遭遇して興奮する。プロットとしてはかなり安っぽいが、これがどうしてなかなかおもしろい。しかし、これを観て、「わー、コール・ポーターだ!マン・レイだ!T・S・エリオットだ!ガードルード・スタインだ!ロートレックだ!ドガだ!ゴーギャンだ!」と全てに興奮できる人は鼻もちならぬインテリと言っていいでしょう。名前くらいしか知らないって人のが多いと思うのだけど、そんな事ないのだろうか。とは言え、インテリを執拗にくさしながらも結局自分もインテリという、いくつになっても変わらぬアレン節がうれしい。

そして、1番重要なのはフィッツジェラルドで、「恋人からは才能の理解は得ず収入面だけが評価されているが、ハリウッドの脚本家から小説家に転身」というギルのプロットは、フィッツジェラルドの生涯を逆行する構造になっており、この作品には報われなかった天才フィッツジェラルドの魂を救ってやるのだ、という意志が見受けられグッときてしまう。

パリの街並み、街灯も美しいのだけど、これはまぁデジタル撮影でわりとありのままの美しさだよな、という感じ。とは言え、アレンにはそんな映画的なものはさして期待していないのだ。とにかくオーウェン・ウィルソンのアレンの化身っぷりがいい。早口の小うるさい所はそのままに、アレンのかわいい所が彼によってギュウっと濃縮されて画面に表れている。ダリに扮するエイドリアン・ブロディの登場も、ファンにうれしい。

レア・セイドゥのチャームさが脇役でありながらもう炸裂しちゃっていて、アレンが彼女に最も美しい演出を施してくるに違いないというのはバレバレだったのですが、ラストはよかったですねぇ。雨のパリの美しさ。