青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

武内英樹『テルマエ・ロマエ』

武内英樹『テルマエ・ロマエ』を観た。

3週連続1位と大ヒットの今作ですが、かなりおかしな作品でしたよ。まずですね、ルシウス(阿部寛)は妻を抱かぬわけです。そして、裸で時空を越えて日本に行っては、バナナを咥え、ミルクを飲み、ウォシュレットをアナルにあてがい快感に涙する。挙句には、子宝祭りの場にスリップして、男性器の形をしたご神体が突き刺さってくるというシークエンスもある。ここにどんなメタファーが隠されているかは容易に想像が出来ると思う。「バカ言ってるんじゃないよ」と思う方もいるだろうけども、ルシウス(阿部寛)が崇拝する第14代ローマ皇帝バトリアヌス(市村正規)は男色家なんですね。そもそも名前がアヌスなんです。そして、必要以上に気嫌うケイオニウス(北村一輝)は女たらしという設定。「いやいや、ルシウスは妻を友人に寝取られて落ち込んでいたではないか」という指摘も、ルシウスがその友人に恋心を抱いていたとしたら?で解決する。更には、本当は漫画家になりたいけども実家のためにお見合い結婚をする真美(上戸彩)に、「自分を偽るくらいなら死んだほうがましだ」といい放つルシウス(阿部寛)。男が好きなのに女を好きなフリをする必要なんてない、誰も阻害されてはいけない!という意味ではないか。これで、もう決まりだ。『テルマエ・ロマエ』はルシウス、バトリアヌスというゲイ2人が神格化されるまでを描いた映画だ。「ローマ人が現代の日本にタイムスリップする」という設定からすれば普通は、「異物との融解」といったテーマで描かれるだろうに、そこを飛び越えて、性差を融解させて神格化する、という離れ業をやってのけている。そんな作品が大ヒットしているんだから、たいしたものである。テーマソングは「誰も寝てはならない」

誰も寝てはならぬ
誰も寝てはならぬ
姫、あなたでさえも、
冷たい寝室で、
愛と希望に打ち震える星々を見るのだ


だ!いや、まぁそういう歌じゃないですけどね。武内英樹というと『のだめカンタービレ』でのヨーロッパ人に竹中直人ウェンツ瑛士、でも他はほんとに外人というわけのわからぬ起用法が思い出されるが、今作でも同様の手法を用いている。ここには、「違和感へのツッコミ」を無化させようと意が込められているのではないか。




ないと思います。そんな話は置いておいて、原作を引用した面白いパート以外の脚本の精彩の欠きっぷりは目も当てられないが、上戸彩がいい。演技がいいとかではなく美しいのだ。照明がいいのです。実家の旅館の室内の感じなんてとてもいい。そこらへんが1番の見所ではないでしょうか。冒頭の銭湯のシーンでの上戸彩が這いつくばってスケッチするシーンをバックからエロティックに捉えるカメラに「ややっ!」と感心する。108分というのは非常に評価したいです。