青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『IZU YOUNG FESTIVAL 2012』


いやー素晴らしいフェスでした。こんなに何組も出演するイベントで楽しかったのって『TOKO-NATSU2011』以来!とか思ったけど、どちらにもヤング(乍東十四雄)とフジロッ久(仮)がそれぞれ企画・出演しておりましたね。ちなみにMC.sirafu氏もどちらに出ている(常夏のほうは片想いで出演)。ヤングの高梨君もフジロッ久(仮)の高橋君も、奇をてらう事も変な野心もなく、シンプルな音楽愛でもって「俺の好きなバンド達どーや?」というのがあって、それがまっすぐイベントに貫かれている。その証拠に高梨君は今回のフェスで全出演バンドの演奏を1番前で聞いてガシガシ踊り、酒をガブガブ飲み、ラストの自分の演奏の番になったら声もガラガラで、果てにはステージで立ったまま寝ていた。とんだ(音楽)馬鹿野郎である。


山と川に囲まれたロケーションも最高で、空気も食べ物も美味しかった。もちろん、出演者のライブが素晴らしかったからに尽きます。ちょっとだけ感想を。テングインベーダーズ、ミタメカマキリ、もしくは乍東十四雄などを聞いていると、ゼロ年代におけるスパルタローカルズの存在は思っていた以上に重要だったんだなぁ、と実感する。野外で聞くT.V.not januaryは最高だった。歌がグッと開放的に響いていた。牧歌的なのだけど気持ち悪い感じがいい。我如古ファンクラブは沖縄のバンドだそうで、なかなかのライブバンドで楽しかった。実にうさんくさい黒いフィーリングがおもしろい。


ザ・なつやすみバンドはやや天候が怪しくなってきた中でのスタート。我如古ファンクラブの淫薇な喧騒を「なつやすみ(終)」の静寂さと美しさで切りかえる。2曲目「世界の車窓から」が始まると見事にまばゆいばかりの晴れ間が覗き会場は大盛り上がり。

何よりこの日決定的に素晴らしかったのは「パラード」だ。ザ・なつやすみバンドの楽曲の凄味というのはメロディーとかコードとかの楽曲構造はもちろんなのだけど、4人の演奏やコーラスが必然性を持って重なり合う瞬間にある気がする。何のこっちゃ、という方はとりあえず6/6に発売される『TNB!』に収録されている超名曲「君に添えて」「かなしみは僕を越えて」のイントロだけでもご確認頂きたい。 ラストの「お誕生日会」は光差し込む中に雨も降り注ぐ嘘みたいなシーンの中で演奏される。

core of bellsは生憎の雨の中での演奏だったわけですが、天候に負けない全うに格好いいハードコアバンドでした。そしてやはりMCの完成度の高さには唸る。超キュートな3歳くらい(?)の子どもがcore of bellsの激しい演奏で踊り狂っていているという嘘みたいなシーンを目撃。core of bellsの演奏が終わるとピタリと雨が止む。ある意味これもおいしいですね。


そして、フジロッ久(仮)。音合わせでオザケンとかハイスタを演奏していて、これがまたかっこいい。いざ、演奏が始まると、わりと致命的な感じにギターとかボーカルの音が鳴っていない。しっかし、それでもかっこいいんだからビックリだ。これぞ人力グルーヴ。いくらフロントマンの2人がステージを飛び出して暴れ回ろうと、ドラムやベースのリズムキープやキーボートの音色など、それぞれが役割をきちんと把握して支えているので崩れない。バンドの熱気を受けては発狂する観客、それに煽られて更に暴れるバンド。この無意味なエネルギーの循環が本当に美しい。何が1番素晴らしいかというと、そこに閉塞感はなく、大きく開かれている点じゃなかろうか。その暴動に加わる事なく、ただそのエネルギーに見とれる事も許される。好き勝手やればいいのだ。そういうのを体現しているバンドだ。


大トリはヤング。前述の通り、フロントマンが開始前にすでにベロンベロン。トイレで見かけた時は自分でズボンのチャックすら下ろせない状態だったわけですが、それでも紛う事なく良いライブでした。なんでだろ。フジロッ久(仮)同様にギターの音は小さかったんだけど、確かに踊り出したくなるグルーヴがあった。いい曲を作り続けてきた、素敵なイベントを作りあげたバンドの軌跡の結果なのだろう。DIY精神でもって音楽を聴く場は都心を離れようと(伊豆までは2時間!)どこでも作れるんだぜ、誰にでもやれるんだぜ、システムぶっ壊そうぜ!というヤングの優しき反抗声明。かっこいいです!ヤングはここからまた走り出すに違いないのです。