青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

沖浦啓之『ももへの手紙』

沖浦啓之『ももへの手紙』を観賞。

構図の素晴らしさと画力の高さでもって至福の空間が広がっている。少女の艶めかしさも凄い。服の下に着た水着に着替る動作が屈指の名シーンなのがフェティッシュで怖い。空から降って表れ昇って帰る妖怪、「ソラ」と呼ばれる屋根裏への昇り降り、桟橋からの飛び下り、みかん畑の傾斜などの上下の運動に、島を走り回るももやクライマックスの橋を駆け抜け等横の線で構成されていて、目が楽しく動く。

しかし、どうも脚本の細部にいま少し豊かさがなく、さびしい印象。ややネタバレになりますが、ラストの手紙のくだりは、せっかく幸一というポストマンをメインキャストにもってきているのだから、彼が何気なく届けるくらいのさり気なさでよかったのではないだろうか。妖怪達が縦の郵便屋であり、幸一が横の郵便屋であって、ラストにそこを融解させて終わらすとか。他にも「『大嫌い、もう帰ってこなくていいよ』という台詞が最後の別れになる」とか「止まっていた時計が動き出す」とかいくらなんでも既視感があり過ぎる脚本はさすがに沖浦啓之がやる必要があるのか疑問。こういうクリシェを多用するのであれば、20分削ってもっと思い切って子供向けにしてしまってもよかったような気がします。後、意外とこれ大きいと思うんですけど、あの妖怪3人の姿は借り物という設定がキャラに思い入れを込めづらい。しかも、その借り物に宿った魂もそもそも妖怪ってのが実にややこしい。本に色々と難点はあると思うのですが、あの画力をスクリーンで見るのは至福の体験ではあると思いますよ。


長編アニメーションへのジブリの呪いは作る側のみならず。観る我々側も威力を発揮していて、とにかく画面にこびりつくジブリの記憶に足をからめとられてしまう。作る側にしても『ドラえもん』とか『鋼の錬金術師』の長編ですらジブリコンプレックスをこじられてしまうのだから恐ろしい。昨年の新海誠星を追う子ども

がその究極に歪な集大成でありますので、お暇な方はぜひご覧あれ。ちょっとした狂気の沙汰です、あれは。「長編アニメーション」という括りの中では片淵須直と細田守だけが祝福を受けながらもその呪いを跳ねのけている印象です。
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余談ですが、やはり『崖の上のポニョ』が僕は滅茶苦茶好き!
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沖浦啓之の素晴らしく写実的な風景より、ポニョでの風景描写にアニメーションの底力とイマジネーションの破壊力を見る。そして、これまたとても好きな劇団ロロに影響与えていると思うなーポニョって。枠を超えたイメージの連鎖というか。どちらも新作が待たれるなぁ。