青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ホウ・シャオシェン『ホウ・シャオシェンのレッドバルーン』

ホウ・シャオシェンホウ・シャオシェンのレッドバルーン』をDVDに観賞。

本当に大好きな作品だが久しぶりに見直して、初見時と同じ、いやそれ以上にうっとりと画面を眺める事ができた。夜中だったのだけど思わず1回半観る。もう1回観てから返却しよう。
豊かな画面というのは、この映画の事を言うのではないか。「映画を見る際に、画面だの照明だの運動だの構図だの言っているやつは気どり過ぎ、話がおもしろければいいではないか」という考えもおおいにわかるのだけど、そう言う前に一度この映画を見てみてくれないか!と息巻く。確かにこの映画のストーリーはクソほどにも面白くないかもしれないが、僕はこの映画の部屋に赤いカーテンの色を吸った光が溢れている様や何気なく置かれた間接照明の光源としての美しさや路上に差し込む光や壁の赤やすれ違う電車の車体がお互いを映し合う様やガラスに映り込む反対の窓から差し込む夕日に、突然涙をこらえきれなくなる事があるのだ。ホウ・シャオシェンチームの照明の美しさ、そして雄弁なリー・ビンビン(ホウ・シャオシェンのほぼ専属な天才カメラマン。最近は『春の雪』『空気人形』『ノルウェイの森』といった日本資本の凡作でも素晴らしいカメラワークを見せている)カメラを観て、映画の魅力にとりつかれて頂きたい。
小さな男の子シノンを見守る視線、母や子守やピアノの先生などの周りの人間、彼をとらえるカメラ、そして空から見つめる赤い風船であり、その温かさが、画面に広がる光と同調していく。


そして、ピアノが調律されていくようにノイズが薄れていく。1956年のアルベール・ラモリスの『赤い風船』

が、少年が風船を見つける映画であるの対し、オマージュであるこの作品は風船が少年を見つめる映画である事に時代の移り変わり、そしてホウ・シャオシェンの映画の美しさが現れているように思う。