青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

近藤キネオ『なんなら君と遠くまで』


私立恵比寿中学の現国担当である近藤キネオが監督を務めた自主映画『なんなら君と遠くまで』を観た。岩井俊二に傾倒したような照明の陽光表現はご愛嬌だが、ドアを開ける、廊下を走る、階段を降りる、パンを食べる、寝そべる、立ち上がる・・・少女達の今”をカメラに収める事で、限定された期間にのみ立ち上がるその身体や表情の躍動を的確につかまえていた。『けいおん!』さながらに、まず足で演技をさせているのもいい。「避難勧告」「誰もいない校舎」といったモチーフから、アクチャルで不穏な展開が予見される。しかし、少女たちは校舎にちりばめられた"それまで"を拾い集め、次に進もうとする。そんな希望のフィーリングに満ちたフィルムだった。教室の窓の向こうからは美しい光が差し込んでおり、少女達がこれから外の世界に飛び出して行く事を祝福しているようだ。