青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

近藤キネオ『なんなら君と遠くまで』

バウスシアターで『O!!iDO短編映画祭』で何本かの短編を観る。選考会で好評だった作品を上映という事だったのだけど自主制作とは言え正直レベルの低さに瞳が悲鳴を上げた。煽り文句の「これはもはや映画ではない-」というのはこういう事だったのかと。

そんな中、私立恵比寿中学の現国担当である近藤キネオ監督による『なんなら君と遠くまで』が想像を超える出来栄えで救われる。もちろん予算の桁が違うのは画面を観れば明白ですが、それを差し引いて、単純に監督の資質だけ見てもあの中では抜きん出ていたと思う。

校舎に残る3人の少女をエビ中から
柏木ひなた

鈴木裕乃

松野莉奈

が演じる。正統派美少女を揃えてきたなという感じですが、監督曰くスケジュールの関係でこの3人だったそうです。ライブでのMCを見る限り相当ズッコケた演技力(あの棒読み感かわいいですけどね!)の持ち主達だと思うので、ヒヤヒヤしていたのですが、なんとほとんど台詞なし!なるほど、やり手ですね。
ドアを開ける、廊下を走る、階段を降りる、パンを食べる、寝そべる、立ち上がる、などの少女達が今を刻みつける運動をカメラに収める事で、限定された期間にのみ立ち上がる少女達の表情を的確につかまえていた。『けいおん!』さながらにまず足に演技をさせているのもいい。教室、廊下、階段などの空間の捉え方も素晴らしい。「避難勧告」「誰もいない校舎」と不穏なムードが展開されるのかと思いきや、そちらの表現に行かないのがエビ中らしくてよいではありませんか。彼女達の運動は、次に進むために校舎にちりばめられた「それまで」を拾い集める作業だった。教室の窓の向こうからは美しい光が差し込んでおり、少女達がこれから外の世界に飛び出して行く事を祝福しているよう。近藤キネオは岩井俊二チルドレンだ。これが1日限定公開というのはもったいない。