青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

東京女子流『Limited Addiction』

Limited addiction

Limited addiction

1stアルバム『鼓動の秘密』に収録されている「鼓動の秘密」「ヒワマリと星屑」のようなキラーチューンはないものの、構成力・統一感が素晴らしい2枚目。「Limited Addiction 」や「Liar」といった傑作シングル郡からもうかがえたが、1stに収録されていた「おんなじキモチ」「頑張って いつだって 信じてる」などの『天才てれびくん』的な陽性のバブルガムポップチューンはなりを潜め、ソウル、ファンク、フュージョンといった単語が飛び交うプログレッシブに進行するハイブリッドサウンドが収録されている。それを乗りこなす彼女達の歌唱の成長も著しい。小西彩乃、新井ひとみというスターは勿論の事、それに続く3人目のボーカリスト中江友梨の存在感が増していて、彼女の高音が実に楽曲のフックになっている。


リリックはローティーンアイドルの楽曲としては背伸びした内容。「誰かをスキになる 不思議な感情」による「胸の鼓動」こそが、彼女たちの輝く生命力の秘密であり、それは「大好きな キミがそばにいる それだけで 大丈夫 どんな問題も 解ける」という万能感に裏付けされている、それが前作『鼓動の秘密』のマインドであった。しかし、今作はそれらが限りあるものだと気づいてしまう少女達のドキュメントになっている。

あぁ なんでキミを 信じてしまったんだろう…
永遠とか 運命とか ふたりの間に見えたのは幻

キミだらけの日々のタイムリミット 

更には「大人になんかなりたくない」とも歌う。ここをメタな視点で見ると、ティーンアイドルというの「中学生になりました」とか「高校生になりました」とか言うとファンから「えーーー」と返されてしまうな世界だ。しかし、「追憶」では「最初からこうなる事はわかっていた」と歌う。それらを「限りある耽溺」と呼び、東京女子流は刹那を踏まえて肯定する。

チャンスは一度きり 視線が合うその時が 
煌めく世界の秘密が 解け合うんだ

そして「Sparkle」や「Rock you!」はそれでも進んでいく、という彼女達の決意表明だ。

何度でも 何度でも 全開で突き進んで
永遠の 約束なら 限界を超えて

東京女子流はアイドルでありながらサウンドを進化させ、更に時の流れと共に進んでいく事を選んだ。ファン、リスナーも耳も心も成長させてそれに必死に食らいついていかねばなるまい。実に野心的な2ndアルバム。