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マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』

マーティン・スコセッシヒューゴの不思議な発明』を観た。

これは素晴らしい。前情報を入れずに見たので驚く。てっきり最近のリュック・べッソン作品とかハリーポッターナルニア的なファンタジー作品かと思いきや、20世紀の映像の魔術師ジョルジュ・メリエスを巡る映画とテクノロジーについての映画であった。画面上の歯車の回転、ドライバーでネジを回す、映写機を手で動かす、などのアナログな運動と共鳴するようにいくつかのクラシックムービーの魅力が再発見される。映画創世記の作品リュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』を初めて目にした観客は、列車が自身にせまってくると身をのけぞったという。

ハロルド・ロイド『ロイドの用心無用』での有名なスタントシーンを我が事のようにハラハラする。

そして、それらの映画の原始的な興奮を、ジェームズ・キャメロンも賞賛したという最新の3Dデジタル技術を駆使して、現代に蘇らせた。今度は本当に飛び出す映像に思う存分身ののけぞろうではないか。
この映画の核となるジョルジュ・メリエスの名前は知らなくても『月世界旅行』のこのカットを観た事がある人は多いはず。私もそうです。

世界初のストーリー映画であり、特殊撮影の始祖。偉大な功績を残しながらも、モンマルトル駅で売り子をして過ごした晩年。そこに、父を失い孤児となった、物を修理するのが得意な少年ヒューゴが現れる。『ものすごくうるさくて、ありえないほどちかい』とどこか類似したムードを持ちながら話は進んでいくも、ヒューゴが修理するのは自分自身だけでなく、メリエスであり、公安官であり、そして映画そのものだ。なるほど、時計台から駅を、街を見下ろすヒューゴの眼差しはどこか神のようである。普通に脚本だけ読むとたいした話ではないのかもしれない、しかしこれが映像と一体になるとどうにも愛おしい作品になってしまう。これが映画の魔法だ。