青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

フランシス・フォード・コッポラ『テトロ』

フランシス・フォード・コッポラ『テトロ』を観た。素晴らしい。観終わった後もしばらく興奮が止まらなかった。美しい陰影を魅せるモノクロの画面を持つこの映画は、「光」を当てる事についての作品なのだ。主題と映像の見事なまでの共存に震える。しかし、大人気ないほどの技の応酬である。編集、音楽、照明とどれも一級だが、特に撮影が素晴らしい。カメラが上から下から斜めから、信じられないようなカットやショットを披露してくれる。

冒頭、べニ―(オールデン・エーレンライク)がバスから降り、テトロ(ヴィンセント・ギャロ)の家に辿り着くまでの一連のショットでもうお腹いっぱいになる。そして、家にたどり着くも、姿を見せないテトロと家に漂う異様な雰囲気、とんでもない事が始まりそうな予感を漂うわす夜からの朝になり美しい光と共にあっさりと姿を現すギャロ、そして始まる楽しき散歩。

ここでは山中貞雄丹下左膳余話 百萬両の壺』、ジム・ジャームッシュストレンジャー・ザン・パラダイス』よろしくの横移動まで飛び出す!して、2人はフェルナンド・エインビッケ『ダック・シーズン』のように画面に並列に収められてソファーに座ったりするのだ。あー楽しい!緊張と緩和が交錯していくのもこの映画の魅力だ。 脚本にも舌を巻く。終わりそうになってもなかなか終わらない、幾重にレイヤーされた重厚な血の物語。アーヴィングの小説を1本読んだかのような満足感。今、ここまで物語に向きあう映画監督はなかなかいないのではないか。冒頭との重複になるが、その物語の重要なモチーフである「鏡」「連鎖」を映像で魅せていく。彼らは一体何度鏡越しに会話し、鏡で過去を知り、一体何回交通事故に遭いそうに、そして逢うのか!受け継がれる骨折、血。


いやーしかし、これぞ映画監督。これぞ、フランシス・フォード・コッポラ!さて、2011年の『Twixt』が日本で公開されるのはいつの事になるのだろう。素晴らしい存在感を示した新人オールデン・エーレンライク(終盤の眼差しには染谷将太も想起した)も起用されているらしい。