青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

バナナ学園純情乙女組『秋の大運動会』


男女問わずセーラー服をまとった50人の若者が、爆音ノイズミックスで、アニメソング、初音ミクモー娘。ももいろクローバー、AKB、サンボマスター小沢健二・・・ジャンク混ぜこぜの音楽で踊り狂う。「一億年と二千年前から君が大好きだと叫びたい、実行せよ!恋愛レボリューション21世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!だから愛し愛され生きるのさ!」って感じ。壇上のセーラー戦士達は様々な格好に着替えてパフォーマンスを行う。スクール水着、ブルマ、ロリータ、SM、ヲタ芸、『ワンピース』『テニスの王子様』『けいおん!』『新撰組』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ケロロ軍曹』『新世紀エヴァンゲリオン』『少女革命ウテナ』などのコスプレ。この10年で日本を席巻したカルチャーを飲み込んで、全部まとめて塊として吐き出す。


携帯電話を放り投げ、糸電話を使い大声でコミュニケーションを切望する彼や彼女にグッときてしまう。情報過多、凶暴なまでのスピード、同時多発性、無意味さ、そして何よりパーフォーマー達の理解を超えた命の消耗は、まさに「戦場」という言葉が相応しい。それは文字通りの戦場であり、また我々の過ごす日常に潜む血の流れない戦場を具現化したようでもある。そして、その戦場を生き抜くのだという強い意志は祝祭感を放っているのだ。セカイ1回終わらせてまた始める感じ。二階堂瞳子

死ぬな、生きてくれー

と叫ぶ姿を見ていると、やはり峯田和伸の姿を重ねずにはいられない。過剰なモノからしかこういった表現は活きてこないのだと思う。間違いなくこの劇団は怪物であり発明で、間もなく世界にその名を轟かすだろう。フランスなんかでは日本以上にウケるのでは。


前回の感想でも書きましたが、とにかく観客巻き込み型で、レインコートを頭でかぶった観客目がけて、水、唾、汗、体液、ボール等色々飛び込んでくるし、会場は臭いし、前や端っこに座ると、演者が乗っかってきたり、抱きつかれたり、キスされたりします。こう書くと異様にアングラな感じを受けるかもしれませんが、あくまでポップなのが凄い。主催の二階堂瞳子は脚立に登り、高い位置から劇場を把握し、50人のパフォーマンスに目を光らせ、毎公演ごとにダメ出しをする。あの一見暴発的なパフォーマンスは完全に統制されたものなのだ。恐ろしい。客いじりもギリギリの所で均衡を保っているため、不快な思いをする事はまずない(はず)。完璧なエンターテイメントだ。