青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

JAMES BLAKE『JAPAN TOUR 2011』


James Blakeの初来日公演に行ってきた。脳に心臓に口に鼻孔に直撃する凄まじい重低音。文字通りに「震える」体験であった。私の隣で観ていた人が全くもって新しい踊り方を始めるので「わぉ、君だけのダンスのやり方だね!」とか思っていたら、そのまま気絶された(周りの人で救護)。なんでもTwitterによると気絶者は他にも続出していたらしい。尋常じゃない重低音と照明の影響か。それとも、あの美貌かのせいか。


凄まじい重低音を伴う複雑なリズムと幸福感すら溢れる轟音。そこにJ.S.バッハすら想起させる美しいソングライティングが同居しているのが恐ろしい。そしてあの歌声だ。鍵盤のみで歌われた2曲を聞くだけでも、彼が時代の先端を走るサウンドクリエイターというだけでなく普遍的な魅力を持ったシンガーである事を痛感できるだろう。歌われているのは、圧倒的な孤独。彼は恋に落ちた事すらないそうだ。しかし、楽曲において「他者との断絶」や「孤独を受け入れる事」や「愛の限界」を描けば描くほどに、逆説的に愛への欲求を歌っているように聞こえてくる。ステージ上で、孤独な極北の彼岸のような場所に連れて行ってくれるサウンドスケープが鳴らされる時、そこに満たされていたのは光であった。