青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ジョン・ラセター『カーズ2』


冒頭のスパイアクションシーンは見事に整理された構図でもって、実写では表現できない活劇を堪能させてくれる。車や日本へのオタクっぽい愛情もニヤリ。そして、凄いのが海、波の質感だろう。そのCGアニメーションは『ルクソーJr.』からここまで来たか、という感じだ。ピクサーの作品が「CGでこれが作れるんだぞ、どうですかうちのコンピューター買いませんか?」という展示会を兼ねていたというのは、この本

メイキング・オブ・ピクサー―創造力をつくった人々

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に詳しい。しかし、この『カーズ2』がどうにもらしくないのは何故か。前作で親友となったピカピカの世界最速者マックィーンとオンボロレッカー者のメーター。マックィーンは親友であるメーターを世界のレース場に連れていくのをためらっている。何故ならメーターが間抜けでサビだらけだからであり、華やかな場所で一緒にいるのが恥ずかしいからだ。ずいぶんとデリケートでエグい所に突っ込んでくる。あなたにも、とっても仲はいいんだけど、どうにもイケてない友人に「こいつとは地元のイオンになら行けるけど、六本木ヒルズに2人で行くのは辛いな」なんて思ってしまった事、逆に思われてるんじゃないか、と考えてしまった事があるはずだ。ないかしら。BLANKEY JET CITYも昔こんな事歌ってた。

友達が僕に言う
あの楽しそうなディズニーランドへ一緒に行こうよって
でも僕は行く気がしない なぜなら彼は気が狂ってるから
一緒にいるのがとても辛くてたまらないから
一緒にいるのがとても恥ずかしくてたまらないから

ガツンとやれるラインだ。こんなテーマを持ち出しておきながら、マックイーンは突然現れたおっさんの判に押したような言説ですぐに心を入れ替えてしまうのだ。ちょっとらしくない。更に、この作品は故障が多く世間から嘲笑されているペッパー車(ようは「胡椒(故障)車」ですね。これは吹き替え版だからこう呼ばれていただけで、アメリカでは、レモン(すっぱい)車と呼ぶそうです。)の復讐が物語の核となっているわけですが、今回彼らに向けられるラセターの視線がどうにも気になる。生まれながらにしての身体の不自由さ、不遇さを嘆く彼らをどうして憎む事ができようか。ラセターであれば、彼らのクラシックなフォルムを愛でるような温かい視線を与えるものだとばかり思っていた。『トイ・ストーリー』でウッディに与えたような。代替エネルギー問題とかを並行させたからブレたのだろうか。とにかく「らしくない」1作であった。