青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

芸劇eyes番外編『20年安泰。』

芸劇eyes番外編『20年安泰。』を水天宮ピットにて観賞。この先の演劇界の20年を担う、として選出されたロロ、範宙遊泳、ジエン社バナナ学園純情乙女組、マームとジプシーの若手5劇団の短編オムニバス公演。

何と言ってもバナナ学園純情乙女組インパクトをまずもって語らねば嘘になる。セーラー服をまとった男女50人ほどが、爆音ノイズ混じりのハロプロ、AKB、アニメソング、ボーカロイド曲、J-POPなどにのって、踊り狂う。観賞前にレインコートの着用を呼びかけられる。上から水がサッと降ってくる程度かなと思っていたら、もう水やら汗やら唾やら粘度のある謎の液体やら紙吹雪やらボールやら携帯やら色々飛び散ってくる。壮絶。水着になったり、半裸になったり、吊るされたり、ヌルヌルになったり、とにかく色々起きていた。その情報過多、凶暴なまでのスピード、同時多発性、無意味さ、そして何よりパーフォーマー達の理解を超えた命の消耗は、まさに「戦場」という言葉が相応しい。それは文字通りの戦場であり、また我々の過ごす日常に潜む血の流れない戦場を具現化したようでもある。そして、その戦場を生き抜くのだという彼らの強い意志は、どこか祝祭感すら纏いだしていた。同系統の表現として銀杏BOYZのライブを想起させる。各々が無茶苦茶に動いているのと思いきや、後方で主催の二階堂瞳子が一心不乱にメモを書くのを目にており、ブログを覗いてみればその日のパフォーマンスのダメ出しがズラーっとメンバーそれぞれに記されていた。全ては統制されたものだと知り戦慄する。また、観客の巻き込みっぷりも凄いのです。よりによって最前列の端に座ってしまったものだから絡まれ度が高かった。色々飛んでくるし、体を密着させてきたり、「10数えたらキスして」と言って見つめてきたり、ずっと水を持たされたり、ちょっと面倒くさかったのですが、爆音響き渡る戦場の中、突然耳元で「好き」とつぶやかれたのには不覚にも命が焦がれるような思いでドキリとしてしまった。



バナナ学園純情乙女組の前に演じたジエン社は、「3.11」以降をド直球で演じた作品で、最後に「若者たちのデモ隊が来る!」という引きで終演を迎えたわけなのですが、まさにそのデモ隊がバナナ学園の事を指しているようであり、完全に前フリとして機能していた。そして、どちらが震災後のパフォーマンスとして必要とされるものだったのかも浮き彫りになったような気がする。



バナナ学園純情乙女組の後のマームとジプシー『帰りの合図、』はさすがの一言。広い舞台との相性の悪さで運動感がちょっとちぐはぐなのが気になったが、ジエン社とは対照的にはバナナ学園との出番順が幸福な関係性を結んでいた。何度も比較対象に挙げてしまい申し訳ないがジエン社の「私たち考えた移動のできなさ」の行った「3.11」以降の表現を日常風景レベルに落とし込んださりげなさと深み。レベルが違うと思う。今回の「帰りの合図、」8月に見る予定のもう1本の短編待っていた食卓、」そして青柳いづみを加えた本公演「塩ふる世界。」は3本の連作のようなものらしい。楽しみ過ぎる。



ロロは短編に向いていないのではないかと思った。というかそれでいいのか、という感じでちょっと残念。あいかわず役者のキャラ立ちは見事で女優さんがかわいい。今回はなんと水着。ちくしょー。範宙遊泳はそれなりに笑えたけど、これもそれでいいのか、が気になる。素人目にも、もっとおもしろくなりそうだから。バナナ学園純情乙女組とマームとジプシーが群を抜いていたのはほぼ全員の共通認識だろう。でも、色々いておもしろいなぁ、演劇界。