青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『穂村弘×西加奈子トークショー』 in 青山ブックセンター

君がいない夜のごはん

君がいない夜のごはん

青山ブックセンターで行われた穂村弘×西加奈子トークショーに参加してきた。泉鏡花が「チョコレートは蛇の味がする」と書いていたのにグッときますよね、というお話が凄く印象に残っている。2人の選ぶ「食べ物の本」が楽しいラインナップだった。穂村弘の選んだ花輪和一刑務所の中』での獄中での甘味、高野文子るきさん』での図書館で焼きそばパン。シチューエーションと食べ物という括りでのトークがおもしろかった。その決定版として、『孤独のグルメ』を挙げておりました。
孤独のグルメ (扶桑社文庫)

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

たまらなく好き。「秋葉原のベンチで万世のカツサンド」「池袋西武デパートの屋上でさぬきうどん」「石神井公園カレー丼とおでん」「西荻窪の自然食レストランでおまかせ定食」とか、いちいちそそるシチュエーションばかりだ。穂村弘もおっしゃっていましたが、吾朗さんの活動範囲に親近感を覚える。中央線〜練馬〜池袋周辺といった感じ。1番好きなのは、コンビニで白飯にうずらと牛肉の中華風、たまご焼き、コンビーフ、きんぴらごぼう、魚肉ソーセージ、味噌汁、おでん・・・と買いまくって机に並べて「うわぁなんだか凄いことになっちゃったぞ」とか言う話だ。

汁物かぶった、卵系かぶった、とか後悔するのがたまらなくいい。主人公がお酒飲めないのも好き。ちなみに穂村弘も全く飲めないらしい。角田光代に「お酒を飲めないのにどうやって女の子と仲良くなるの?」と聞かれて困ったという話がおもしろかった。その質問に「公園に行く」と答えた下戸がいたという話に凄まじく共鳴してしまい、サインをもらう時に、「公園に行くってわかります!」と伝えたら、「公園マップを携帯しましょうね」と言われた。なるほど。西加奈子はお酒飲みらしく、「飲めない人が飲み会に来るのであれば、お酒は飲まないにしてもお代わりのタイミングは合わせてウーロン茶頼んで欲しい」とのこと。お茶だと膀胱破壊されます。



カフェでデートをしていて、彼女のケーキにハエが止まった時にどういう対応をするのがベターか、というトークテーマも。こういう「試し」を何回もこなさないといけないので恋愛は途方に暮れるという穂村弘。常にポイントが削られていく感じに滅入ってしまう。

どうして書くの?―穂村弘対談集

どうして書くの?―穂村弘対談集

で語られていた

女性には、まるでスタンプがたまって何かが満期になったかのように、付き合っている男性への対応が激変することがありますよね。どう訴えたところでメインスイッチが切れてしまった以上、他のスイッチを押してもつかない。

これは凄く共感してしまう。そこから、西加奈子が、東野幸治の奥さんが、東野と食事をしてる際、「食べ方キモっ」とゲロを吐いた(比喩とかでなく)、という話を披露。スタンプカードが満期になるとそこまでくるのか。恐ろし過ぎる。



トーク終了後サイン会。前回の時より穂村さんから積極的にお客さんに話しかけていて、ビックリした。以前はずっとプルプル震えていたのに。今回も『ラインマーカーズ』から短歌の句をチョイスして書いてくれました。

「写真、1枚もないんだ、ごめんね」とチューインガムの匂いの夜に

から「チューガムの匂いの夜に」と書いてくれました。うれしい。