青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

穂村弘『君がいない夜のごはん』

穂村弘の最新エッセイ

君がいない夜のごはん

君がいない夜のごはん

を読んだ。多少のマンネリを感じないでもないが相変わらず面白い。穂村弘に共感できるか、できないかを友達を作る際の物差しにしたいくらいだ。いや、やっぱそんな友達ばっかりだったら嫌です。どんな友達か?例えば「飲み会でうまく席替えができない」「寿司屋で板前さんに注文するのが苦手」「長袖から半袖への移行が下手くそ」など。これらに、わかる、わかる、となれば、あなたも立派な世界音痴だ。なんだか絶妙にどうでもいい生きづらさが詰まったエッセイ集
世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

は必読です。他にも本への愛が詰まった
もうおうちへかえりましょう (小学館文庫)

もうおうちへかえりましょう (小学館文庫)

恋愛論を語る
もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

などから入ってみるのもオススメです。元々、穂村弘ニューウェイブ歌人。その生きづらさゆえの世界との距離を必死に縮める作業が短歌を作る事だったのだろう。とりあえずはベスト盤ともいえる
ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi

ラインマーカーズ―The Best of Homura Hiroshi

を読もう。デザインは大竹伸郎です。


この3本なんて結構有名ですよね。

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい


個人的にはこれ好き。

眩しいと云ってめざめる者の眼を掌で覆うときはじまる今日よ

女性には

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

が人気とか。確かにこの作品は凄い。歌人としてはこれで燃え尽きたのでしょう。もう10年も歌集は出ていません。

ハロー 夜。ハロー 静かな霜柱。ハロー カップヌードルの海老たち。

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき

明け方に雪そっくりな虫が降り誰にも区別がつかないのです

腕組みをして僕たちは見守った暴れまわる朝の脱水機を

「美」が虫にみえるのことをユミちゃんとミナコの前でいってはだめね

この世界のすべてのものは新しい名前を待っているから、まみは

夜が宇宙とつながりやすいことをさしひいても途方にくれすぎるわね

なんという無責任なまみなんだろう この世のすべてが愛しいなんて

夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう


言葉を捕まえて世界を作る。かっこいなぁ、歌人って。しかし、エッセイでの彼はずるい。自分のかわいさを完全に知っている。その上でダメエピソードをチラッ、チラッと披露してみせる。穂村弘は『アメトーーク』の「中学の時イケてなかった芸人」や星野源、オードリー若林など今や主流とも言える手法の先駆けだったと言えよう。イケてなかったエピソードを話すと、男女問わず安心感や共感を与える事ができて、グッと距離を縮められるんですねぇ。サバンナ高橋星野源もオードリー若林も穂村弘もみんな超腹黒い策士家だぜ!でも、そういう性格悪い人って好きです。