青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

バイロン・ハワード&ネイサン・グレノ『塔の上のラプンツェル』


ディズニー映画としてほぼ完璧な内容だ。どこまで関わっているのか定かではないが、ピクサージョン・ラセターがクリエイティブ・オフィサーに就任してからのプリンセスものは『魔法にかけられて』『プリンセスと魔法のキス』そして本作と、息を吹き返すどころか、過去の傑作を凌駕する勢い。ラセターのその手さばきはウォルトを超えた、と言ってしまってもいいのではないか。


アクションをベースにミュージカルのように歌い踊る痛快活劇。今作でもプリンスの印象は薄く、更にはラプンツェルによる

あの人きっと私の事好きよ

という台詞によって完全なる女性上位時代の到来を告げた。この作品で何より心掴まれてしまうのは、この映画が「自分のために照らされる灯り」を求める光の旅となっている点だ。ラプンツェルは魔法の力で髪が光る。誰かのための光源体であったのだが、「自分のために照らされる灯り」を目の当たりにする。どういうわけだか突然、生きる意味や何故ここに存在するのか、といった事がクッキリとわかってしまう瞬間が、あのシークエンスには描かれている。それらがあまりの美しい光と共に描かれている事に涙し、「ここで終わればいいのに」と強く願った。が、もちろんそんな事はなく、映画はこの後、予定調和な展開に流されていく。