青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

鈴木卓爾『にじ』

渋谷ユーロスペースの「SO+ZO映像祭2011」で鈴木卓爾『にじ』を見た。園子温と平野勝行に認められようと作ったという監督20歳の頃の自主8mm。ぴあフィルムフェスティバルPFF)で審査員特別賞を受賞したとか。「自分で自分を撮る。カメラを回し出したらフィルムが終わるまで撮り続ける。なるべく撮った順に繋げる」をルールに1本の作品にしたそう。何をやっているのかわからないし、映像の揺れや音の割れもひどくて見られたものじゃないのだが、おもしろいのだ。すでにこの8mm作品で監督としての資質が見え隠れしているのがおもしろい。例えば、劇中で自分の日常を無理矢理フィクションに落とし込もうとする。たとえば、祖父母を旅先で出会った"老夫婦"という役柄に勝手に設定して、一方的にコミュニケーションする。しかし、それに対する他者からのツッコミはない。フィクションへの否定が一切映ってない。この質感はまさしく『ゲゲゲの女房』だ。


画面には映る8mmフィルムは1本で3分間。今作が映し取っているのは、ウルトラマンが地上にいられるのは3分間、走る電車、夕方5時のチャイム、生える髭と髪、年老いた祖父母。これらを記録する事で、目には見えない時の流れを何とか具現化しようとする試みだったんではないかと思う。そして、その時の流れに確かに存在する自分を、画面に刻みつける若者の試み。特筆すべきは、祖父がベランダでバイオリンを弾くシークエンス。力強い画だった。