青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ハイバイ『投げられやすい石』

美大学生時代に「天才じゃ天才じゃ」と言われた佐藤と、その友人のいたって凡人、山田。ある日、佐藤が忽然と姿を消す。。そして2年後のある日、山田は佐藤に呼び出される。「会って、話したいことがある〜ん」受話器越しの声に、不安にかられる山田。しかし行くしかない。約束の場所に着くとそこには変わり果てた佐藤の姿。なんとか会わないで逃げ出したくなる山田!才能を持つ者、持たなかった者、失った者、の間を愛と打算がビュンビュン飛び交う、青春ラヴストーリー。

演劇素人の僕はまず、会場の密度に驚く。あの距離感で声や肉体の表現を体感できるとは。凄まじく感動してしまった。小劇場では今、こんな表現が行われているのか。松本大洋がいつも描く「才能」についての話でもあるのだろうが、コミュニケーションの不完全性さとそれゆえの美しさについての描写に感銘を受けた。本音と建前、空虚なトークと沈黙が交互に乱れ撃たれる。目を伏せたくなるような、心のやわらかい部分をえぐるような、悲しくて可笑しい会話の妙にうなされる。間や空気感を駆使してとにかく連発される気まずさ。その気まずさを体感できてしまうのだから、もういてもたってもいられない気分になった。そして、河原で石を投げ合う瞬間、劇中唯一気まずさから解放されるのだ。美しいシーンだった。タモリという存在の重層的な響きも、印象的。あぁ、でも「才能」についてのバースも素晴らしかった。「お前は何者だよ?」と聞かれ「俺はお前(天才)を知っている人だよ!」というやりとり。あぁ。