青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

クレイグ・ギレスピー『ラースと、その彼女』


ラブドールであるビアンカに魂が宿る。そう聞くと是枝裕和の『空気人形』を連想するのだが、本作はその魂の宿り方が秀逸。ビアンカは動くわけでも喋るわけでもない。ただ、主人公ラースを見守る周囲の人々の善意によって魂を持つのだ。服を着替えたり、お風呂に入ったり、髪を切ったり、そしてなんと仕事だって持つ。話の性格上、いくらでも品のない展開で山場を作ることのできる作品だと思う。悪意の登場による安易な山場を作らず、人の善意にのみに焦点を絞って、丁寧に生きるということを描いている。