青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

クレイグ・ギレスピー『ラースと、その彼女』


とてもよかった。ラブドールであるビアンカに魂が宿る。そう聞くと是枝裕和の『空気人形』を連想するが、この作品はその魂の宿り方が秀逸だ。ビアンカは動くわけでも喋るわけでもない。ただ、主人公ラースを見守る周囲の人々の善意によって魂を持つ。服を着替えたり、お風呂に入ったり、髪を切ったり、そしてなんと、仕事だって持つのだ。話の性格上、いくらでも品のない展開で山場を作ることのできる作品だと思う。例えば、ラースの奇行に対していやがらせをする者が出てきたり、ビアンカラブドールという存在へ振り戻すために強姦するやからが出てきたりとか。そういった悪意の登場による安易な山場を作らず、善意にのみ絞って、丁寧に表現した脚本家、監督に拍手を送りたい。「こんないい人ばかりなわけがない」と言う人は人間関係という戦場で野たれ死ねばいいだろう。この作品はそんな戦場を生き延びるための希望を託している。音楽もよい。デヴィッド・トーン。デヴィッド・シルヴィアン坂本龍一デヴィッド・ボウイなどの作品にも参加しているギタリストだそう。