青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

白石和彌『ロストパラダイス・イン・トーキョー』


出口のない閉塞感、まさに平坦な戦場に生きる登場人物たちが夢見るパラダイス、アイランド。すべての事がするっとうまくいくような、はみ出した者たちが報われる世界。ここではない何処か。まさに学生時代からとり付かれているUFO幻想を体現した映画で、またその一歩先を描いた作品だった。それはここではない何処か、という幻想に潜む閉塞感。それをきちんと描いているのが表現として誠実だった。そして、どこにも行けないのであれば、そこをパラダイスにするのだ、という新しくはないが肯定的なメッセージに素直に心撃たれた。主人公の住む小さなアパートや、何気ない旅先や、トウキョウで時折目にする空き地がパラダイスと化す多幸感溢れるシークエンスの数々には自然と涙がこぼれた。あれらのシーンには、すべてがうまくいくような感覚が確かに描かれていた。