青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ラジオ「ハライチ岩井 フリートーク集」の凄味

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突然ですが、2017年にリリースされた音源のベスト1が決定いたしました。「ハライチ岩井 フリートーク集」である。「ハライチのラジオがおもしろい」というのは何度も目にする文言でしたが、すでに放送が開始されているラジオ番組を新規で聞き始めるというのは、かなりのリテラシーが求められる。ラジオ番組の特有のグルーヴというか、ルールのようなものを飲みこまねばならないからだ。その点において、この「ハライチ岩井 フリートーク集」は、まさに導入にうってつけなのである。番組内の岩井フリートークのみが編集され、トークをトラックで区切りタイトルで管理、更にはトップ画にタイムスケジュールまで記載してくれている。まるで1枚のアルバムを聞くようにして楽しめる。


1曲目の「電車」を試聴さえすれば、それ以降のトラックに耳をふさぐのは難しいだろう。岩井の淀みのない流暢な喋りとその声質の良さ、巧みな情景描写とオチに向けての緻密な構成力(無駄な言葉が一つもない)、そして忘れてはならない相方・澤部の聞き手としての優れた力量・・・その他もろもろが組み合わさって、思わず声を上げて笑ってしまった。この岩井勇気が『人志松本のすべらない話』に出演していないなんて嘘みたいだ。その後、待ち受けているのは夢のような3時間46分。お気に入りのトラックを繰り返し聞いて楽しみ(繰り返しの視聴に耐え得るトークなのだ)、今ではリアルタイム視聴と並行して、『ハライチのターン』の過去のアーカイブスを第1回放送から聞き漁っている。移動中のこの上ない楽しみである。



「ハライチ岩井 フリートーク集」はもう全トラックが好きなのだが、あえてオススメを挙げていってみよう。まずは12曲目の「隙あらば実家に」になるだろうか。そのままハライチの漫才として披露されたとしても、震えるほど感動するに違いない。何某の大会で優勝させたい。「せっかく1人暮らしを始めたというのに、暇を見つけては実家に帰る」という30歳過ぎの男の情けなくも愛おしい人間性だけでもすでにおもしろいのに、「実家帰りたい」というワードが繰り返される面白さに旨味を見つけ、話がどんどん悪ふざけの方向に転がっていく。思いついたままに喋っているようで、隙あらばの“隙”の時間が的確に短くなっているのが凄い。「ビックサンダーマウンテン並ぶんだったら、実家帰りたい」「釜飯は炊きあがりに40分くらいかかりますって言われたら、もう実家帰りたい」「紙コップの自販機、ボタン押してジュース出てくるまでの間、実家帰りたい」の発想の連打に痺れまくった。


そして、代表曲に数えたいのが11曲目「死の庭」と19曲目「裏の世界」である。これぞ、イリュージョン話芸である。ここまで堂々と、ホラ話をエンターテインメントとして成立させてしまう話し手が、この国に何人いただろうか。繊細な手つきで、嘘のディテールを積み上げていき、日常のすぐ裏側に虚構の世界を作り上げる、そのバランス感覚が絶妙だ。「裏の世界」は奇しくも現在話題沸騰中のドラマ『ストレンジャー・シングス』と共鳴している。シーズン2を観ていて、「ペットボトルの水と塩さえあれば、裏から元の世界に戻れるぞ!」とウィルに伝えたくなったハライチファンは少なくないことだろう。こういう事を書くと、一部の反感を買いそうですが、「死の庭」や「裏の世界」での岩井のトーク力は、脂が乗り切っている頃の『ダウンタウンガキの使いやあらへんで!』のフリートークに匹敵するのでは。と、同時にポップカルチャーの教養がほぼないと思われる松本人志がああいった質感のトークを量産していたことにも改めて恐れ入る。


サウナ・風呂好きとしては2曲目「スーパー銭湯」もたまらないものがある。あのヌメっとした”子ども”の連呼が、病みつきに。来るとわかっていてもおもしろい。ミニマルな繰り返しが転がっていくハライチの漫才の旨味が凝縮されている。10曲目の「パンサー向井」のメドレーもうれしい。聞いた誰もが、”かわいいかよ”というフレーズが言いたくてたまらなくなるに違いあるまい。「俺、ピザ好きなんだよね」って言って食い出すも、すぐにお腹いっぱいになっちゃう向井の描写がとりわけ好きだ。こちらを3本メドレーの組曲に仕立てあげたセンスも最高。16曲目「アンパンマン考察」の鋭い着眼点とドライブ感のある論理展開は、正直こういったブログを書いている人間として嫉妬しかない。ゼロからイチを作れるだけでなく、ああいった批評性まで持ち合わされてしまったら、お手上げだ。・・・そんなこんなで、永遠に褒め称えてしまいそうになるので、ここらでやめにしておきたい。ぜひ、この「ハライチ岩井 フリートーク集」をきっかけにして、ハライチのラジオの世界に埋没して頂きたい。TBSラジオで木曜24:00~25:00です。
www.tbsradio.jp

ほりぶん『牛久沼』

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母娘が牛久沼で釣った立派な鰻を、町中の女達が奪い合う。そんな、およそ物語にはなり得なそうなあらすじだけの60分間を駆けめぐる。ほりぶん第4回公演『牛久沼』である。これが嘘みたいにおもしろい。ほりぶんの、と言うより鎌田順也の作る演劇はいつだって”観たことのない”、刺激的なものだ。


鎌田順也はいつも変わった場所を上演場所に選ぶ。ナカゴーやほりぶんを観なければ、行かない場所や街がたくさんある気がする。今作の上演場所に選ばれたのは、ほりぶんのホームと言える王子駅から徒歩3分、北区の誇る区民ホール「北とぴあ」の14階、カナリアホールだ。同日、「北とぴあ」の1階にあるさくらホールでは、倍賞千恵子がコンサートをしていた。確かに”さくら”と言えば倍賞千恵子だ。エレベーターで同乗したおじいさんに「チエコちゃんを観に来ましたっ」と小さな声で告げられた。すでにちょっとおもしろいではないか。これが、ナカゴー・ほりぶんを"観る”という体験である。カナリアホールは何故か天井に立派なシャンデリアが掲げれれている。普段は社交ダンスなどに使われるスペースなのだろうか。


青、赤、黄、緑・・・色とりどりのワンピースを纏った幾人もの女優たちが横長の舞台を行き来する。その動線は、さながら歌舞伎の花道。役者たちも、なんちゃってな”見得”を切りながら登場してくる。黒子もいる。もしかして、これが今、何かと話題の「ワンピース歌舞伎」なのか・・・。1匹の鰻を巡り、円を囲うようにして取っ組み合っては、(鈍い暴力で)四方に散っていく、色彩豊かなワンピースのその運動性が目に楽しい。また中盤のプレイバックの演出が圧巻だ。女優たちが「キュルキュル」*1と声に出しながら、それまでにこなしてきた動きを逆再生して、舞台上の時間を巻き戻していく人力プレイバック。圧倒的なくだらなさにグッときてしまう。時間を巻き戻す能力を持っているのは、町の誰からも相手にされない自家製ソーダ売りの女。そのソーダは、時間を操る能力と何ら関係はない。それでも、その女をソーダ売りに設定するという意味のなさが、物語をグッと豊潤なものにしているように思う。


女優たちは、なかなかの運動量と声量を要求されている。課された負荷をはねのけるようにして躍動する女たちの姿にグッときてしまうのは勿論なのだが、この『牛久沼』という、鰻争奪を巡るバカバカしい劇が妙に観る者の心を捉えるのは、劇の中の女たちが、彼女たちなりの圧倒的な正しさで、ぶつかり合っているからだろう。母娘の約束の為、病弱な息子に栄養をつけさせてやる為、亡き父の果たせなかった無念の為、潰れた定食再興の為・・・それぞれが「正しい」と思いながら、衝突している。もちろん、その”わかりあえなさ”はどうにも絶望的なのだけども、それは我々の住む世界そのものでもあるから、せめて劇中の女達のように活き活きとありたい。プレイバックにしろ、”女たち”の描き方にしろ、鎌田順也という作家は、今やタランティーノ以上にタランティーノ的だ。

*1:「わちゃちゃ」という説あり

PUNPEE『Modern Times』

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オープニングトラックの舞台は2015年。年老いたPUNPEEが、40年前にリリースされた自身のファーストアルバムを振り返るところから始まる。未来から過去への眼差しでもって、現在を紡ぎ出す。その構造は、サンプリングという過去の遺産を掘り下げる手法で花開いたヒップホップミュージックの構造そのものをトレースしている。ミサイル、水爆、原発・・・極めて不安定なこの世界情勢であるが、2057年というやつは確かに存在し、それはどうにも穏やかな未来らしい。食卓で妻の振る舞うビーフシチューを楽しむような*1。この「未来はそんな悪くないよ」とでも言うようなポジティブなフィーリングは、不安な現代を生きるわたしたちをひどく勇気づける。しかし、そうでもしなきゃ、たかだか40年先の未来にすら希望を抱けない世界なんて・・・実にクソったれだ。

はいはい まぁご存知の通り
見た目も中身もまぁ覇気がない
はしにも棒にも引っかからずに男だか女か
それもわからない あ Pです

いかにもやる気のない体で待望のファーストの幕を開けるPUNPEE。「地球のことはどうでもいいのさ」とうそぶきながら、宇宙に飛び立ってしまうのだけど、実のところ、この現状には沸々と怒りを宿しているらしい。

妄想癖がドレスコード
見渡す限り皮肉なこんな世界じゃ
皮肉な曲は笑えないしな

時代はあれもこれもみんな 先に決めつけてさ
想像するだけで このままじゃ豚箱行きさ

偉い人に化けた異星人が
想像力を惰性で流そうと目論んでる!ってまた。。。
あの芸術家達もあの戦争に行ってたら死んでたかも
あの戦争の犠牲者の中にも
未来の芸術家が何人居たろう?

共謀罪や安保法案、その一方で平和ボケしたようなくだらないスキャンダル報道を過熱させるメディア。この国に歩み寄るうす暗い影をバースに忍ばせながら、それらを”想像力(このアルバムにはジョン・レノンが2回現れ、イマジンする)”を巡る戦いとして、立ち向かう。そして、とびきりの音楽で未来のご機嫌を窺がう。その姿はさながら、等身大のスーパーヒーローだ。大切なのはイマジネーション、”君の閉塞的な脳みそに少しだけ突き刺さる閃光”、それもイマジネーションのことだろう。



ヒップホップミュージックが持つ、時空を超えた交感のフィーリングは、ロバート・ゼメキスの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を経由して*2、「タイムマシーンにのって」「Oldies」というパーソナルな2曲に帰結する。マクロからミクロへ。

人はこれって時にどうしても
時間を戻せたらとか言うね
でも誰も直せないから
直せないんだなぁ
昔からそうだし
まぁしょうがないねぇ
きっと先は不確定 不安定
でもお行儀よくじゃつまんないね
タイムマシーンに乗り込んで
トラベラーになれたら

例えば未来が すでにあるとして
だけど僕は あがき進んでいくのだろう
時は人をなじって時に振りまわすから
すべて 笑い話になればいいな"Oldies"と

誰もが持ち合わせる後悔と未来への不安を優しく包み込む。ヒップホップシーンのみならず、ポップミュージック史に名を刻む2017年の名曲の誕生である。



ヒップホップシーンのみならず宇多田ヒカルから藤井健太郎など、様々なシーンから賞賛を受ける大天才。でありながらも、PUNPEEはあくまで「板橋のダメ兄貴」と自嘲してみせ、このアルバムにおいても、「俺はパンピー(一般人)」という態度を貫いている。これは過剰な謙遜でも何でもなく、PUNPEEというアーティストの表現の核でもある。

先に名乗られなくてよかった
密かにこの名前気に入ってるのさ

と、自らのMC名について言及する「P.U.N.P. (Communication)」は超重要だ。

いつも俺に当たってた先輩も実家帰り 継ぐ家業
その先輩の大事なパンチライン
もったいないパクっちゃお(パクリちゃうんで)
汗だくの金田君は 糖尿で過去の人
鼻をいきまくってた米田君は 株主で超大富豪
ネタがなくなってきたってわけじゃないが
この名前やっぱ気に入ってる
君はおれで 俺はきみなんだ ほらわかったら
捨てるんだ こんなCD!!

それさえわかったらCDを捨てろ、とまで言っているわけだから、このアルバムで最も伝えたいラインは「君はおれで 俺はきみなんだ」であると決めつけてしまいたい。東京のローカル板橋区での日常のスケッチから意識は宇宙へと拡張し、PUNPEEという人格は増殖・分散していく。さならがら、”サンプリング”のように。PUNPEEは高田君だけども、金田君でもあり、米田君でもあり、私であり、貴方だ。

ニシンが数の子から誕生
サケの子供がイクラみたいに多分PUNPEE
そのうち何かに変化する

PUNPEE(と言うよりヒップホップシーン)は自我の絶対性に懐疑的で、Sugbabe、PUN-P、Heavy TOMO・・・複数のネーミングを持ち合わせている。わたしたちは絶対的な存在ではない。わたしたちは代替可能であり、故に歴史は受け継がれ、繰り返す。実家に帰った先輩MCのパンチラインをパクるようにして(先輩もまたPUNPEEであるから、それはパクりではない)。

若い世代が新しいものを作り、老いた者が見守るの繰り返しだよ
誰かが作れなかったものを次の若者が作る

未来はいつだって輝かしい過去の中にある。タイムマシーンに乗り込んで、墓を暴き、死体を繋ぎ合わせよう。そして、バックトゥザフューチャー。しかし、PUNPEEは礼儀正しい。アルバムは終盤に向かうにつれ、今はもうこの世にいない、かつての”わたしたち”へのレクイエムの様相を見せ始める。

死んじゃったいつかの
マブダチの灰をRollして
スモークすりゃアイツも
幻覚になって出てくる

あの芸術家達もあの戦争に行ってたら死んでたかも
あの戦争の犠牲者の中にも
未来の芸術家が何人居たろう?
きっと彼らのアイデアは空気を伝って
僕らが形にしてるこぼさずに
灰色の世界にひらめきを
夢のような暇つぶしを
つくりだそうぜHero

これまでの”わたしたち”に溢れんばかりの感謝を述べながら、「大事なのはこれからだぜ」と過去から未来から”わたしたち”を鼓舞する。*3 耳当たりはとびきりスウィート、ウットリするほどの情報量とギミックで編まれた、フューチャーコズミックヒップホップオペラ、それがPUNPEEの待望のファーストアルバム『Modern Times』である。*4


関連エントリー
hiko1985.hatenablog.com

*1:ついでにマリファナも解禁されている

*2:当然40年後のPUNPEEにインタビューしているのはデロリアンに乗ってやってきた若きPUNPEE

*3:ネタバレすれば、そのすべては隠しトラックによって覆される

*4:ちなみに私が偏愛しているのは14曲目「Bitch Planet」で「あ、ラウデフでーす」とピンポンとチャイムを鳴らして乱入してくるところ。「だめとかないじゃん、普通」がいい

宮藤官九郎『監獄のお姫さま』1話

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TBSの「火曜ドラマ」枠に、満を持して宮藤官九郎が登場。出演女優陣の豪華さはもちろんのこと、企画・編成に磯山晶、メインチーフに金子文紀、とテレビドラマファンであればクレジットだけで涎をダラダラと垂らさずにはいられまい。あの『木更津キャッツアイ』(2002)からちょうど15年、「あの伝説よ、再び」と願うのがファン心理というもの。多用されるプレイバック、何やらイリーガルなチームプレー、森下愛子(ローズ姉さん)に塚本高史(アニ)・・・『木更津キャッツアイ』の記憶を振動させる様々なモチーフ。「おばさん版木更津キャッツアイだ」なんて声も挙がっていますが*1、この1話の段階ではあの鮮烈さには遠く及ばないというのが正直なところではないでしょうか。プレイバックも冗長で野暮ったい。爆笑問題を登場させての疑似『サンデージャポン』のOPも、『木更津キャッツアイ』での哀川翔、『マンハッタンラブストーリー』(2003)での船越英一郎に比べると、どうにも・・・『木更津キャッツアイ』において何より肝心であった中身のない駄弁りと大騒ぎ、仲間内でしか通用しない質の悪いジョークの数々だろう。それらはこの『監獄のお姫さま』にもトレースされているが、正直言ってまったくキレがない。女優(坂井真紀)のふざけ方などは目を覆いたくなる出来栄えなのだけど、もしかすると、あのうすら寒い感じが狙いなのだろうか。とは言え、まだ1話。演る方も、観る方も、身体が温まっていないわけで、今後に期待だ。おばさん達のドーナッツトークでもって、物語を転がしていって欲しい。



とは言え、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)、『カルテット』(2017)を送り出した「火曜ドラマ」であるからして、そのフィーリングは共鳴しているし、切り込むテーマは現代的。傷ついた女性たちの緩やかな連帯でもって、クズ男に復讐する物語。しかし、クエンティン・タランティーノの諸作や坂元裕二の『問題のあるレストラン』(2015)のそれとは一線を画しているように思う。懲らしめられるべき男、板橋五郎(伊勢谷友介)が単なるクズでなく、妙にブルージーに描かれている。彼には、家族への愛が確かに存在しているように思えるし、爆笑ヨーグルト姫事件への”後悔の念”のようなものも感じさせる。

あの人、泣いてるんだもん
「何やってるんだろ、俺 なんでこうなったんだろ」って
情けなくて自分を呪って泣いてるんですよ

シンプルな勧善懲悪ものであれば、必要のない要素がしっかり書き込まれているのだ。やはり、『逃げ恥』『カルテット』のように、複雑な感情の在り方を、生き方を、肯定する物語なのだろう。

母さんだけが悪いわけじゃないって知ってるから
父さんも良くないって
別にもう怒ってないからね

1話目にして馬場カヨ(小泉今日子)が息子にいとも簡単に”許されてしまう”ところにも顕著だ。別居している母からの差し入れを迷惑がる息子。このデフォルトみたいなやりとりが、どうにも絶妙だ。

公太郎:そういうのが1番困るんだよ
カヨ:困らせたいのよっ

底抜けに明るい。差し入れたケーキをゴミ箱に捨てられることなく、きちんと食べられる。こういった安易な軋轢のドラマメイクを避けて、親密さのようなものを紡ぎ出す宮藤官九郎の筆致を信頼したい。



お揃いで色違いのネイルにアイフォンケースから、戦隊モノヒーローのイメージが重ねられている意図はまだ掴みかねている。しかし、”色”の演出は今作でも周到だ。吾郎のかつての恋人殺害のイメージが繰り返し挿入される。ナイフの刺さった白シャツから流れる赤い血。この”死”のモチーフである白と赤が執拗に画面に構成されている。何度もリフレインされる「お節の中では何が好きとかあります?」という爆笑問題への回答は「なます(大根と人参)」であるし、サンタクロースの衣装、クリスマスケーキのクリームと苺、えどっこヨーグルトのパッケージ・・・そのどれもが白と赤のミックスである。この混じりあった感触こそ、今作の描きたいものなのだろう。



“女囚もの”であるからして、「犯した罪は許されるのだろうか」といったテーマも内包していくのだろうか。1話では、そこに対して、先生(満島ひかり)から、ガツーンと否定の言葉が飛び出す。

ずうずうしいんですよ犯罪者って
時間巻き戻せると思ってるんです
刑務所のことタイムマシンか何かだと思ってるんです
出てきたら犯した罪までチャラになると思ってるんです

齧られたおにぎりを前にして「元には戻れないんです」と、完全にどこかで観たことがあるような、食べ物に重ね合わせた「時の不可逆性」への言及。しかし、思い出したいのは、馬場カヨが登場した橋のシーンである。

違うんです!
向かってるんですけど遠ざかるんです!

何なの!?
なんで前に進んでるのに後ろに下がるのよぉ!

後悔を抱えて後ろ向きに、目指す方向とは違ったとしても、進ことは進む。思いもよらぬやり方で、不可逆性というものを覆している。

*1:『ごめんね青春!』(2014)の時も言われていたような・・・

最近のこと(2017/10/09~)

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長濱ねるのすべての画像の副題をワールドイズマインとしたい。長濱ねるさんのファースト写真集が12月に発売されるらしい。3冊買おう。ギリシャ撮影という渡辺梨加さんの写真集も当然楽しみ。しかし、急に寒くなった。とは言えもう10月も半分過ぎているのだからこれが順当な寒さなのか。そろそろ炬燵を出そうと思う。外が肌寒いので少し厚着をする。外にいてちょうどいい恰好をしているのに、電車やお店が外の気温に合わせて暖房を入れていてムワっと辛い・・・という悪循環を人類はどこで断ち切れるのだろう。お店はまだしも、着脱のしづらい電車でのそれは悪だ。



月曜日。三連休の最終日なので、のんびり過ごす。『野球太郎』のドラフト特集号を買って、気になる選手のチェックなどに勤しんだ。

清宮か安田が獲れればうれしいが、外したら1位は投手で、2位以降は野手中心か。岩見、楠本、宮本、西浦、田中あたりを獲得してくれたらうれしい。3位で田中を獲れたらこんなにありがたいことはないが、さすがに難しいだろうな。お昼ご飯に、仙台で朦朧として購入したハウス食品の「シチューオンライス」を作って食べる。クリームシチューとご飯の相性には懐疑的だったが、この商品は玉葱の旨味でもって、クリームとライスを見事に融和させている。美味しいのかはよくわからないけども、今まで食べたことない味がするので、ぜひ試してみて欲しい。ゲームで疲れた身体をほぐしに、銭湯へ。サウナに入ったら、口内炎の腫れが急激に引いた。サウナにそんな効果があるとは聞いていないが、またしても私のサウナ信仰が深まってしまった。レイトショーで北野武アウトレイジ 最終章』を観る。むちゃおもしろかったが、シリーズ3作の中では今のところ3位。小日向文世という狂言回しがいなくなって、物語の筋運びが愚鈍になり、演出のキレがやや落ちた印象がある。もう2回くらい観てみたい。韓国フィクサーと白竜は最高だった。映画館の入ったショッピングモールに、『マツコの知らない世界』で何年か前に紹介された「菊水堂のできたてポテトチップス」が売っていた。
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当然買うのだけど、口に含むなり「劇的に旨い!」となるものじゃない。化学調味料無添加とのことで、味のインパクトは薄いのだけど、口に運ぶ度に素朴な美味さが積み上がっていく、崇高なポテチだった。ポテトチップスをポテチと略したのは『きんぎょ注意報!』が最初、という説があるが本当なのだろうか。あの漫画によって”焼きそばパン”は特別なものになったし、『きんぎょ注意報!』の再評価を進めていきたい。不良牛とかペンギンの郵便屋さんとか懐かしくて涙が出る。グラサン、金髪でシャアみたいな葵ちゃんがめちゃ好きだった。



火曜日。連休明けの業務で力尽きる。しかし、この1週間悩まされていた口内炎がめでたく完治。お祝いに、最近お気に入りの激安スーパーでイワシの刺身と寒ブリの切身とブロッコリーを買って帰った。どれも信じられないほど安くて、変なテンションになってしまう。イワシはとりあえず適当に身をほぐして、葱と大葉としょうがとニンニクと混ぜ、醤油を垂らして食べる。非常にワイルドな味わいだった。ブロッコリーは茹でてマヨネーズで。CMの菅野美穂みたいにして、食べた。

MODERN TIMES

MODERN TIMES

PUNPEEの待望のファーストアルバム『Modern Times』がやっとこ届いたので、ずっと聞いていた。七尾旅人の『911FANTASIA』みたいな始まりに面食うも、これは大傑作だ・・・と大袈裟に震える。数多のカルチャーからの引用の手捌きに惚れ惚れするし、全曲たまらなくポップ。作品に迸るエモーションにもバシっとやられてしまった。板橋の星だ。いつか映画館で鉢合わせたいものです(今も板橋に住んでいるのか知らないけど)。
ジョルジュ大尉の手帳

ジョルジュ大尉の手帳

古本屋で買ったジャン・ルノワール『ジョルジュ大尉の手帳』をお風呂で読み終えて、いたく感動した。拡散されていく自我の絶対性。何よりエピソードの芳醇さと文章のおもしろさにやられる。そして、あまりにヴィヴィッドな性(生)の交感の描写。



水曜日。髪が鬱陶しいので散髪する。昨日買ったブリを焼いた。家で魚を焼くのは久しぶりだ。部屋のあらゆるものが生臭くなるデメリット以上の美味さを得られないからである。ネットで得たうろ覚えの知識で、焼く前に酒と塩につけておき、表面に熱湯をかけて臭みとりをした。グリルでなくフライパンで焼いても、充分美味しかった。洗い物も簡単なので、もう二度とグリルで魚を焼くのは止めようと思います。
hiko1985.hatenablog.com
この日放送の『水曜日のダウンタウン』は凄かった。「リアルスラムドッグミリオネア」での小宮さんの頭脳明晰さ、素敵だ。「寝たら起きない王選手権」にやられすぎてしまい、思わず個別エントリーに記してしまった。都市生活者のブルース、としての黒川明人さん。ここにきて、小宮さんがとにかく愛くるしくて仕方ない。ルックスはすっかり垢抜けたけども、あのかわい気がずっと健在なのがうれしい。テレビに出始めた頃、浜村さん(ex.浜口浜村)が「俺の感じていた小宮のかいわさがテレビでも伝わってうれしいよ」とライブで喋っていたのが凄く印象的でいまだに忘れられない。あれは「三組のライブ(仮)」だったか。三組の内、三四郎は著しく売れたが、浜口浜村もドリーマーズも解散してしまった。いつか、「三組のライブ(仮)」同窓会を開いて欲しい。三四郎ウィキペディアを見ていたら、小宮さんと私は同じ小学校の出身であった。そういえば、ちょっと前に母親がそんなことを言っていたが、何かの間違いだろうと聞き流していた。学年も2つしか違わないので、かなり同じ風景を目にして育ったということだ。ちょっとドキドキしてしまうではないか。



木曜日。仕事帰りにサクっと銭湯でサウナへ。最近は攪拌していない水風呂のほうが好き。攪拌しているほうが体感温度は下がるのだけども、動きのない水風呂はジッとしていると、身体感覚が消える。そして、静かな水面の揺らぎを見つめながら、ととのうのがいいのだ。ものすごいととのいを得たのだけども、帰り道に大雨に降られた。帰宅して、再びイワシとブリを食べた。この日から放送が開始された『刑事ゆがみ』、何と演出が西谷弘(『任侠ヘルパー』『昼顔』など)であった。冒頭の浅野忠信神木隆之介の殴り合いの画面に、しっかりとアクションが息づいている。『わろてんか』の高橋一生のアクションシーンのうまくなさと比べてみれば、監督の力量がお分かりいただけるだろう。やたら凝った構図と手間のかかりそうなロングショットの挿入がたまらない。あともう少しだけ脚本が楽しければ、言うことなしだ。『ラストクリスマス』(2004)という月9ドラマが、坂元裕二×西谷弘なのだけども、脚本と演出でトップランカーに進化した2人のタッグをぜひとも観てみたい。織田裕二が主演でいいので。



金曜日。13日の金曜日、何かが起こりそう。
youtu.be
斉藤優里さん、素行不良のイメージがあってあまり好きじゃなかったけど、最近すっかり心を許している。乃木坂46が誇る名曲「13日の金曜日」のパフォーマンスでの「セイっ!」という間の抜けた、そもそも何をセイすればいいのかよくわからない煽りも、昔は「うるせぇ」と思っていたが、今はあれなしじゃ聞けない。あの「セイっ!」を欲している俺がいる・・・にゃんこスター理論である。にゃんこスターの賛否両論続いている。信頼している書評家が「にゃんこスターごときで驚く人達に・・・」という書き方で演劇界の笑いを持ち上げて失笑した。演劇界隈が賞レースの時だけお笑いを評し出すの信用していなくて、誰だか忘れてしまったのだけど、バイきんぐが優勝した際に、「みんなこんなのがコントだと思ってるの?」とつぶやいていて、むちゃ腹立ったのだけ覚えている。



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仕事のあと、知り合いの方に田端の居酒屋「初恋屋」に連れていってもらった。海鮮系が売りのお店。新鮮な刺身を堪能しました。写真ないのですが、ウニやスルメイカも抜群。刺身だけではなく、カキフライ、マグロのスタミナ焼き、イカのバター炒めなども美味でした。狭い店内にミッシリお客さんが詰められていて、落ち着く店とは言えませんが、オススメ。下戸なので、おおいに飲める人がいてくれないと、こういった居酒屋には行きづらいので、今回はありがたかったです。久しぶりに酔っぱらう人と対峙したのだけども、話が永遠にループしていて凄かった。ものすごい読者家の方で、常に鞄に4冊くらい入れて、毎日1時間余裕をもって家を出て喫茶店で読書してから仕事場に向かうらしい。海外のSF小説を原書で読んでいて、かっこよかった。

三の隣は五号室

三の隣は五号室

お風呂で長嶋有『三の隣は五号室』を読み終える。凄い。『ぼくは落ち着きがない』もだけども、間取りを文章で書く困難さを易々とこなしている(間取り図自体も出てくる)。こんな風にライトに記憶の集積や総体としての人々を書いてしまえる才能につくづく感服である。


巨人の村田修一戦力外通告を受けたそうな。三塁と一塁の守備が巧くて、頑丈で、確かな実績のあるホームランアーティスト。来年38歳とは言え、ヤクルトの補強ポイントにあまりに一致している。ヤクルトには日大で同期の館山もいるし、そもそもヤクルトは日大派閥なところあるし、絶対獲得に動いてくれる!と思っていたら、ロッテ入団が濃厚のよう。うーん。川端と畠山を戦力に数えるのはいい加減にやめたほうがいいし、ドラフトの結果次第では絶対必要になる選手では。育成に全力を費やすのもよいのだけど、球場に足を運ぶ身としては、少しでもましな試合して欲しいのだよな。これで来季も大松、武内、荒木とかが一塁を守っていたら、イライラしてしまいそうである。



土曜日。『わろてんか』の千葉雄大がナレーションベースで死んでいて、ビックリした。濱田岳は素晴らしいし、高橋一生は気になるが、ずっとはてなマークが浮かび続けているので、もう観るのをやめようと思う。スーパーの特売日だったので、朝から行ってみたら、凄い混み方をしていた。そして、確かに特売品が目白押し。どっさり買い貯めて帰宅し、こんなにも冷蔵庫が充実したのは初めてではないかと悦に浸った。ドラクエやって、ドライカレーを作って、食べる前に銭湯へ出かける。サウナがないので、足が向かなかった上板橋の「第一金乗湯」という銭湯に初めて赴いた。
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戸次重幸主演の『昼のセント酒』の記者会見はここで行われたらしい。2013年にリニューアルしたばかりで、内装はモダンでスタイリッシュ。ちょっとした高級旅館宿の浴場のようである。サウナはないが、水風呂はあるので。温冷交互浴を楽しんだ。交互浴の場合、最高に気持ちいいのは水風呂に入る時でなく、水風呂のあとに入る熱湯だ。ジワーっと身体が温まってくる感覚が倍増されて、脳内に快楽成分が行き交う。低温の薬湯も気持ちいいし、何より落ち着いた雰囲気が最高で、すっかり気に入ってしまった。夜の24時までやっているのも素晴らしい。ちょっと通いたい銭湯である。サウナがあれば言うことなしなのだが、サウナがあるとまた雰囲気が変わってしまいそう。帰りにコンビニで『EX 大衆』を購入。

長濱ねる表紙、長濱ねるクリアファイルに長濱ねるポスターがついて、大貫真之介さんによる長濱ねるロングインタビューが掲載されている。長濱ねるって何回書いたって飽きないじゃんね。写真集5冊買おう。『陸海空 地球征服するなんて』のスペシャルを追っかけ再生。まさかの前・後編とは知らず、前半の2時間半しか録画していなくて、ショック。『世にも奇妙な物語』の深川麻衣さん主演の短編、観た。振り向いただけで、猛烈かわいかった。あと、Netflixラバーガールの『GIRL』と『大水が出た』を観直した。



日曜日。この日も雨。晴れ間をしばらく観ていない気がする。せっかくの気候が台無しである。ひたすらに『ドラクエV』に勤しんでいた。重厚で長尺のシナリオに「人生だ・・・」と感動している。主人公は10年間奴隷生活を強いられたり、8年間石像にされていたり、ろくでもない人生なのだけど、文句ひとつ言わない。というか、「はい」か「いいえ」しか喋らない無口なやつ。終盤に突入し、ダンジョンの難易度が上がっている。壺から出てきたブオーンの強さと、「ボブルの塔」の異様なエンカウント率の高さと、「封印の洞窟」のブルーイーターレッドイーター、デビルマスターが揃って出た時の凶悪さについて・・・発売から25年経って、『ドラクエV』に新鮮に翻弄されている人間がいる。これまでひどく悩まされてきた、『ドラクエⅪ』の為にPS4を買うか、3DSを買うか問題ですが、堀井雄二曰く、任天堂switchでのソフト化が進んでいるとのことですので、無事解決しました。任天堂switchを買います。『マリオオデッセイ』も『ゼルダの伝説』も『マリオカート』も超やりたい。しかし、どうしてもやりたいゲームを自分の意思で買える、という自由さは、身分不相応な気がして臆してしまう。ゲームソフトというのは「摸試でいい成績とらないと買ってもらえないもの」みたいな幼い頃の認識から抜け出せない。YouTubeに2011年に放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」のSMAP3時間完全版があって、観ていたら、インタビュー記事の静止画や他番組の映像が挿入されたもので、編集者の熱意に感服。3時間ずっと目を潤ませていた。SMAPという奇跡。この日放送の『乃木坂工事中』を観ていて、1期生の円陣映像を観て、またしても泣く。乃木坂1期生という奇跡・・・2期生も3期生も好きだが、やっぱり1期生は凄い。『欅って、書けない?』、ひらがな2期生が真っ当に美少女揃いなのに面食らう。ひらが1期はあんなにも癖のある美少女たちなのに。丹生明里さんがとびきりかわいかった。あと、長濱ねるさんのひらがなポーズからの照れ顔に気絶した。写真集10冊買おう。