青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

仙台ドライブ紀行

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音楽を聞きながらドライブをして、そのゴールとしてロロ『BGM』の仙台公演を観る。ロードムービー劇である『BGM』を観た者ならば、誰もがひらめくであろうこのすばらしくてナイスチョイスな思いつきを、実行に踏み切ることにした。しかし、先週末からの体調不良をズルズルと引きずっており、コンディションは極めて悪い。不安である。「朝の5時に起き、6時には出発してしまおう」という皮算用は、寝坊によってもろくも崩れ去った。5時起きとわかっているのに、昨夜遅くまで『おじゃMAP』の「香取・草彅の2人旅」の録画を観直してしまったのだ。奇しくも、こちらもロードムービーだった。私の頭の中で、ロロの『BGM』と「香取・草彅の2人旅」はほとんどイコールで結ばれた。


起きたら既に朝の6時半である。加えて体調もやはり悪い。「いっそ家でゆっくり寝ていようか」という考えも少なからず、頭をよぎったが、なんとか自身を奮い立たせる。急いで支度をするも、出発は7時半にズレこんだ。レンタカー屋のおじさんは予約時間に遅れたにも関わらず、嫌な顔一つせず親切だった。カーナビに目的地の劇場「せんだい演劇工房10-BOX」の住所を入力してみると、到着予定時刻は12:20と算出された。開演時間は12:30であるから、1回でもトイレ休憩を挟んだら、ほぼアウトということである。かなり危険な賭けだが、「予定時刻に間に合わない」というオチも、実に『BGM』という公演の内容に沿っている。そんなよくわからない慰めを胸に、ギャンブルスタートを切った。


到着見込み時刻が開演時間にギリギリということは、休憩をとれないのはもちろんだが、少しの判断ミスも許されないということだ。高速道路のドライブというのは、僅かな進路変更のミス一つで、簡単に数十分単位のロスが発生してしまう。常に神経を張り巡らさねばなるまい。しかし、BGMにはこだわりたい。まずはマイブームが訪れているカーネーションを聞いた。最新アルバム『Suburban Baroque』と名盤『Parakeet & Ghost』の2枚だ。

Suburban Baroque

Suburban Baroque

素晴らしい演奏と歌声、そして詩情。気分はすっかりご機嫌である。走るは『BGM』の冒頭と同様に、常磐自動車道。劇中に登場する守谷サービスエリアに後ろ髪を引かれつつ、車は一目散に北を目指す。ときに最近は、長嶋有『愛のようだ』と近藤聡乃『A子さんの恋人』の影響で、日産ラシーンと日産ジュークに夢中なのである。
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こちらは1番人気"ドラえもんブルー"のラシーン。この日も、その2台が走っていやないかなとずっと道路に目をこらしていたのだが、一度も姿を現さなかった。ここ最近の道路はフィットとプリウスばかりで、ロマンというものがない(どちらも、いい車ですけども)。


さすがに膀胱の限界が訪れ、聞いたことのない名前の小さなパーキングに止まった。到着予定時刻に変動はなく、間に合うかはまだ五分五分の状況である。ブログやTwitterで「仙台までロロ、観に行きます!」と意気揚々と宣言していたので、開演時刻に姿がないのはちょっとバツが悪い。遅刻のフラグを立てておこうと、現状をツイートしておくことにした。すぐさまロロ主催の三浦くんが「ヒコさあああん!お待ちしております!!」というリプライをくれた。そのリプライを神木隆之介の声でもって脳内で再生し、最後の気力を振り絞る。すると、カーナビが示す到着時刻がみるみると縮んでいく。これが神木くんの神通力である。最終的に予定より30分早く仙台に到着することができた。BGMはカーネーションからSMAP、Enjoy Music Club、槇原敬之と続き、到着間近にHAPPLEの傑作アルバム『ハミングのふる夜』を聞いた。

ハミングのふる夜

ハミングのふる夜

アルバムのラストナンバー「主題」にこんなリリックがある。

ボクらは思い出の中にも生きていて
確かな呼吸をし続けている

あまりにロロ『BGM』にふさわしいではないか。会場に着くと、hi,how are you?の原田くんがいた。「今日は江本さんのお母さんも来てるんすよ」と教えてくれた。「それだけでもう胸熱す」などとあいからわず適当なことを言っていて、ほっこりした。数時間の運転を経て観劇する『BGM』は、車のシートに座る感触が身体に残っていて、まるで泡ノ介やBBQのドライブに同乗しているような質感を、より強く覚えた。登場人物らに強い”愛おしさ”を感じたのだ。はるばる来て、よかった。ときに、この公演の感想、書ける気がしないのだけども、仮に書いたとしても、漏れてしまうであろうものとして、泡ノ介(亀島一徳)の「ピカチュウ」のイントネーションと、午前二時(島田桃子)の「何か音楽かけて・・・とてつも似合うやつ」という台詞が凄く好きだったことを、記しておきたい。あと、泡ノ介たちが披露する予定だった劇中劇がジャルジャルっぽくて最高だった。


終演後は、出演者やスタッフとの面会で賑わっていた。「忙しそうだし、時間をとらせたところで、たいして弾んだ話できないしな・・・」と、持ち前の気さくさでもって黙って帰ろうとするところを、劇中のラストシーンよろしく後ろから午前二時(島田桃子)さんが声をかけてくれ、何とか三浦くん(≒神木隆之介)や江本さんに挨拶することができた。危うく、遠路はるばるコミュニケーション障害ぶりを露呈するところであった。三浦くんとは互いに存在を認識し合って5年ほどの年月が経っていると思うのだけども、実は5分以上の会話をしたことがない。しかし、私は三浦くんをソウルメイトだと思っているし、腰を据えて話してみたいことは山ほどある。SMAPのことやサウナのこと、はたまた元・阪神タイガース桧山の生涯打率についてとか。でも、そうしないことにある種の美しさのようなものを感じてもいる。


劇場を後にする。時刻はすでに15時。体調が悪いとは言え、朝から何も食べていないので、さすがにお腹が空いた。しかし、火傷跡にできた口内炎があまりにも凶暴で、熱いものが食べられないのである。泣く泣く牛タンを断念し、国道沿いの回転寿司屋で食事を済ませる。海が近いから旨いだろう(別に全てのネタが東北の海のものじゃないから本当は関係ないはず)、というプラセボ効果は抜群だった。しかし、体調がよくないので、ナマモノはまずかった。すぐに具合が悪くなる。予定では「汗蒸幕のゆ」で韓国式のサウナを楽しもうと思っていたのだが、もう運転する気力がないので、寿司屋から1番近かった「スーパー銭湯極楽湯 名取店」で休憩することに。わざわざ仙台まで来て、全国チェーンのスーパー銭湯に。しかし、この施設はそう悪くはないのだ。いかんせん混み過ぎなのは難だが、2台ストーブのサウナは大汗仕様だし、水風呂は16℃ほどに冷えている。外気浴スペースには10台ものデッキチェアが配置されていて、まどろみ放題。とは言え、総合点では平均的なスーパー銭湯と大差はないので、また来ようとは思わない。仙台でサウナに入りたいというのであれば、「サウナ&カプセルホテル キュア国分町」をオススメする。1週間以上体調を崩していたので、久しぶりのサウナ。寝不足も相まって、3セットこなしたあたりでフラフラに。デッキチェアで寝そべっていたら、そのままかなりの時間をうたた寝してしまった。浅い眠りの中で、テレビから乃木坂46が新曲を披露している歌声がかすかに聞こえてくる。土曜日の夕方だから『MUSIC FAIR』だろうか。そういえば、恵俊彰の声が聞こえる気がする・・・とか思ったが、調べてみたら『MUSIC FAIR』の司会は恵俊彰鈴木杏樹体制からいつの間にか軽部アナ仲間由紀恵に変わっているらしい。じゃあ、あの時私が聞いた恵俊彰の声は?それはきっと思い出の中の恵俊彰だ。私たちは”今”という時間だけを生きているわけじゃない、思い出の中にも生きていて、その2つが交錯しながら、未来を形作っている。そして、なんでかわからないが、恵俊彰は未来永劫嫌われ者だ。


極楽湯を後にし、その向いにの大型スーパーに入店した。そこで暮らす人の生活に根差したご当地ものをゲットしようという魂胆。サンドウィッチマンがこよなく愛することでも有名な「定義三角油揚げ」のパック詰めされたものを購入。アイス売り場ではブルボンの「ルマンドアイス」を見つけた。何故かいまだに関東圏では買えないのだけども、東北では大々的に売り出していた。
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入口のベンチに座って食べた。本当にルマンドがそのままアイスになっていて、感動はするものの、あまりにそのまま過ぎるような気がしないでもない。そして、ハウス食品から出ている「シチューオンライス」のルーを買った。これは今思い返しても、わざわざそれを仙台で買う理由が皆目見当がつかないが、買った。チキンフリカッセ風を買った。頭がフラフラで正常な判断ができなかったのだ。
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*このあとスタッフが美味しくいただきました


ツルハドラッグで、口内炎用の薬を買い、栄養ドリンクを飲んで、いざ帰路へ。しかし、走り出すやいなや、あまりの眠気に命の危険を感じ、サービスエリアで1時間休憩とることに。お土産に永遠のマスターピース萩の月」をゲットした。帰り道は常磐道ではなく東北道であった。個人的には常磐道のほうが、旅情があって好き。ガラガラで単調、灯りも極端に少ない高速道路は眠気を促進させる。またしても死の恐怖を覚えたので、福島県あたりのサービスエリアでシートを倒して軽く眠ることに。気が付いたら、4時間ほど経っていて、時刻は夜中の3時だった。車の中で『オードリーのオールナイトニッポン』をリアルタイムで聞くのを楽しみにしていたのに。そろそろ本腰を入れて帰路に着かぬと、レンタカーの返却時間が近づいている。歯ブラシセットを買って、歯を磨き、顔を洗い、気合いを入れ直す。睡眠の甲斐あり、車は快調にスピードを上げる。夜は徐々に白みだし、視界も良好だ。早く家に帰って横になりたい、その一心で、ハンドルを握る。しかし、体調が悪かったとは言え、体力が落ちたものだ。10年前は一晩眠らずに運転するなんて朝飯前であった。歳はとった。しかし、若さというのは体力だけを指すものでない。車をどこまでも走らせよう、そういった心持ちにこそ宿るのではないか。そんな風に考えながら、「未来はいつも楽しい」と唱え続けた。
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『おじゃMAP!!』スペシャル「ザキヤマディレクターが撮る!! 香取慎吾&草彅剛の2人旅!!」

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メンバー各々が単体で魅力的なのはもちろんなのだけども、やはりSMAPのメンバーが2人以上揃うと、その画面が異様にグルーヴするような感覚に陥る。なんてことない映像やトークでもずっと観ていられてしまう。もちろん、これはSMAPというグループへの思い入れが大きく左右するのだろうから、興味がない人にとってはつまらないものなのかもしれない。今回の『おじゃMAP!!スペシャルの視聴率も9%ほどで、決して突出した数字ではない。しかし、やはりSMAPを愛する者にとっては極めて特別な回であった。


スキャンダルいじり、行きつけのお店紹介、愛車や自宅の公開、恋愛トーク、路上ゲリラパフォーマンス・・・少なからずジャニーズ事務所を退所したからこそ可能になったのでは、と思われる元SMAPである2人のプライベートの露出。事務所のしがらみを抜けた等身大の香取慎吾と草彅剛を見せていこうとするのだけども、逆説的にそのスーパースター性がクッキリと浮かび上がっていくのがおもしろい。ウン百万の旧式クラシックカーを乗り回し、ウン十万のビンテージ古着やギターを嗜む、偉大なるグレイトアメリカ幻想に憑りつかれた草彅剛の常識外れの金銭感覚。その草彅に呆れ、こちら(視聴者)側の感覚に寄り添う素振りを見せる香取慎吾にしても、あのアンタッチャブル山崎弘也をしおらしくさせてしまうほどの豪邸に住んでいる。テレビで観たことのないようなモザイクのかかり方が、より想像を掻き立て、その偶像性を際立たせる。一部公開された香取の手による芸術作品の圧倒的なオリジナリティも含め、やはり一般人を超越した感性を見せつけられた。やっぱりこの2人は紛れもないスターなのである。


そして、何より番組をリードしていたのは草彅剛のその異様なハイテンションだろう。新しいスタートからくる解放感、そのスタートを親友との共演で始められることへの喜びに満ちていたのだろう。しかし、それでもやはり変人としかいいようのない佇まいで、観る者を圧倒させた。草彅剛のこの”変さ”に、何やら既視感があるなと思っていたのだが、かもめんたるのコントで岩崎う大が過度にデフォルメして演じる奇人変人そのものなのである。かもめんたるファンであれば、ご理解いただけると思うのだが、立ち振る舞い、発声、間など、どこをとってもまさにかもめんたるのコント。時折発される胡散臭い「やっべー」「やっぱり肉はうまいんだよー」の言い方など完全にそのもの。などと思っていると、草彅の口から「冗談ハンバーグ」という言葉が飛び出し、転げ落ちそうになる。そう、かもめんたるが『キングオブコント2016』で披露したコントに

冗談どんぶりぃ

というキラーフレーズが登場するのである。
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まさかのシンクロニシティ。会話の途中で突如として愛犬を猫なで声で可愛がる、という一連のシステマティックな振る舞いに、山崎から「もうコントじゃん」というツッコミが入り、この「草彅剛=かもめんたる説」は補完された。とにもかくにも、草彅剛という男は、かもめんたるのコントの登場人物同様に、圧倒的な異常性ゆえに濃くその存在をこの世に刻む、愛すべき奇人変人なのだ。


その奇人性を受け入れて、どこまでも肯定してみせる香取慎吾の友情が泣かせる。

変な人でさ
変なこと言って、急に変なことやるけどさ
スゴい真面目でしょ!?こんなところが好きです

”しんつよ”とは、現代の最も美しい友情神話の一つである。「夫婦や恋人に近い」「宝物」「自分自身」「もともと同じ樹」といった強い言葉で互いを形容し合う、その崇高さに満ちたエピソードの数々は、おそらくファンの方々がテレビや雑誌などのインタビューから少しずつ集めて形成されてであろうおそろしく充実したWikipediaの項目をぜひともお読み頂きたい。深夜の練習に、ストリートダンスパフォーマンス、豪華セットでの楽曲披露・・・かつて確かに存在したSMAPとしての青春を反復してみせることで、その確かな温もりと眩しさこそが、今後の2人の未来をも明るく照らす、そう確信させられるスペシャルな番組であった。


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岡田恵和『ひよっこ』26週目「グッバイ、ナミダクン」

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グッバイ、ナミダクン、また逢う日まで。半年間の放送を終えて1週間ほど経ちますが、まんまと『ひよっこ』ロスに陥っている。日に日に、『ひよっこ』という作品が私の中で大きくなっていくのを感じる。ちょっと遅くなってしまったのだけど、こうしちゃおれん、と最終週に関するエントリーを書き殴りました。そちら、『文春オンライン』の「ひよっこフォーエバー」特集に掲載して頂いております。お時間ありましたら、ぜひお読み下さい。
bunshun.jp
ここに書き漏らしていることがまだまだたくさんある気がする。谷田部家が披露する「涙くんさよなら」の泣き笑い混じったような歌声(あの混じり方こそ、『ひよっこ』であり、人生だ)、実がすずふり亭に預けたお重の記憶を取り戻すという伏線回収のスマートさ、「幸せを諦めません」というヒデの結婚宣言、ヒデからのプロポーズを受けたみね子が返す「結婚しよ」(有村架純の声色と表情!!)、つぼ田つぼ助の2人に流れる愛しきBL感、澄子と豊子の同棲生活開始、回を重ねるごとに素晴らしい存在感を形成していった島崎遥香の由香、最後の最後で登場した津田寛治演じる高校の担任教師・・・とにかくもう、『ひよっこ』は全然"終わらない"のである。



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最近のこと(2017/09/27~)

youtu.be
SaToAの新曲「Light」のMVである。天才だ...メロディも歌唱もパーフェクトだけど、演奏の音色とフィーリングが最高×100。さて、10月になってしまった。ありきたりなことをペラペラと並び立てると、何をするにもちょうどいい素敵な季節が訪れた一方で、今年もあと3ヶ月だとかと焦ります。しかし、本当に時の流れが早い。『カルテット』観てたのなんて、ついこの間な気がするのだけど、あれは年初の出来事らしい。珍しくこの「最近のこと」を書き漏らさず、更新できそうである。月末・月初はブログ更新へのモチベーションが高い傾向にある気がする。



水曜日。帰りにスーパーでハムと卵を買って、丁寧にハムエッグを作ったら、丁寧な分しっかり美味しかった。思い切って卵を3個も使ってやった。「卵はコレステロールが多いので、1日1個まで」という古からの教えはもう定説ではないようだ。板東英二眞鍋かをりの人体実験のおかげである(彼らは1日10個くらいゆで卵を食べるらしい)。

藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない

藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない

めでたく発売となった藤岡拓太郎の漫画作品集『夏がとまらない』がどうにもこうにもおもしろい。何度も噴き出して笑った。好きなページに付箋をたくさん貼りました。この間、さっそく人に貸してみたのだけど、「付箋、何これ?」と聞かれて恥かしかったので、「いや、あの、出版元のナナロク社は斬新なデザインの出版物を出すことで有名なのだよ・・・川島小鳥の『明星』とかさ」とか適当なこと言ってごまかしていたら、「凄い!だってこれ、付箋貼るとか手作業でしょ!?凄いよ!」と素直に受け入れられてしまった上にナナロク社の株まで上昇したので、まだ嘘だと言えていない。それとも、向こうも騙された体を続けているのか。騙すか騙されるかの世の中、気が抜けない。
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ドラマの『わにとかげぎす』を最終回まで観続けることができた。終盤、散りばめられまくった”悪い予感”がサラっと表出することなく過ぎ去っていく感じが実に古谷実だった。主人公カップル2人が最後まで敬語を使い続けていたのが最高じゃないか。本田翼がとにかく良くて、全身全霊で好きでした。本田翼の「富岡さん」と呼ぶ響きが凄くいい。「じゃ、私が富岡さんを幸せにします!」と、ジェンダー観の逆転もサラっと描いてくれた。これはぜひとも『逃げ恥』『カルテット』の枠で放送して欲しいドラマだった。



木曜日。桂正和『I"s』実写化の報に胸が熱くなった。

I

I"s (15) (ジャンプ・コミックス)

瀬戸一貴役が岡山天音らしい。バッチリでは。ついでに、寺谷役を浅香航大にして、『ひよっこ』ファンに媚びて欲しい。『I"s』派か『いちご100%』派で、歳がバレますが、私はどっぷり『I"s』世代。桂正和だと、『電影少女』は通ってないけど、『D・N・A² 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜』に小学生時代、ものすごいドキドキしていた思い出がある。
D・N・A2 1 (ジャンプコミックス)

D・N・A2 1 (ジャンプコミックス)

『I"s』は修学旅行で伊織ちゃんと同じ布団に入るくだりが好き過ぎて、連載当時100回くらい読みました。Wikipediaを読んでいたら「雑誌掲載時は掲載誌が少年雑誌であるためにヒロインの乳首等は描かれなかったが、単行本では追加されている」という記述を読んで、すぐにでも本屋に行かねばらなるまい、と使命のようなものを感じた。するってぇと、『ドラゴンボール』のブルマの乳首とかも単行本時の加筆だったったのだろうか。連載掲載時の記憶があるという方、情報を求む。仕事後、東京国際フォーラム野性爆弾野性爆弾大博覧会 鬼歩歩(きぽぽ)ちゃん~やりたいネタの集い~』に駆け付けた。平日に1500席のホールがしっかり埋まっている。東京のどこにそんなたくさんの野性爆弾ファンがいたのだ。オープニングのベンジャミン・ボーナス楽団の大ホールでのパフォーマンス、痺れました。
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野生爆弾のコントは変な笑い方をしてしまうものばかりだ。どう笑っていいかのよくわからなくなってしまう。圧倒的な感性と器用さ、そして幅広いカルチャーからの引用で成り立っているのだけども、まったく洗練されていなくて、とても観づらい。しかし、そこがたまらなくかっこいいと思えてしまうからやっかいだ。妙な恍惚感に包まれながら、帰宅。けやき坂46の井口真緒が「長濱ねる兼任解除」について綴ったブログが感動的だった。成人した人間が書いたとは思えない拙い文章力なのだけど、確かなエモーションが宿っている。特に好きだったのは「尊敬と感動でねるちゃんは凄く偉大でした」という一節。言葉は本当はこういう使い方が正しいのでは、という気になる。



金曜日。予定がちょうど合ったので、竹馬の友3人で集まる。荻窪の「ツバキ亭」という洋食屋でハンバーグを食べた。ハンバーグもそれなりに美味しかったが、それよりも、シェア用に注文した”季節の一品料理”が絶品。とりわけ、ラム肉のしょうが焼きと白子のフリットが抜群に美味しかった。店内にエンドレスでオアシスのベスト盤が流れていて、ついつい気分が高揚していましますが、いいお店だと思います。食事後に「邪宗門」で珈琲を飲んでから、解散。「邪宗門」は店内も店主も抜群の雰囲気だし、珈琲も特別な味で美味しい。レジ前に『サザエさん』の茶の間のセル画が貼ってあるところに凄くグッと来てしまった。しかも家族が勢ぞろいして”ない”カットなのだ。『オードリーのオールナイトニッポン』を聞きながら帰っていたら、たまたまオードリー2人の母校の前を通りかかった。この場所にあの2人の軌跡が熱として残って・・・みたいなことは一切思いませんでした。なんせ日大二中の前は昔からよく通る道だったのだ。中村橋駅から荻窪駅までバスの通り道。中学の頃、荻窪までバスで向かって、友達とタウンセブン荻窪駅直結の古い商業施設)で待ち合わせて、モーニング娘。の生写真を買って、「ニューコミヤ」でソフトクリーム食べて解散する、というような死ぬほどつまらない土曜日の過ごし方をしていた。バスの中で、ゆずの『ゆずえん』をMDで聞いていたのを凄くよく覚えているし、「ニューコミヤ」のモカソフトはとても美味しかった気がする。BOSSの缶コーヒーを自販機で買ったら、”当たり”との表記が。BOSSタオルが当たっていた。サイトにアクセスしないで、その場で当たりがわかるのは嬉しい。この期間に何とかBOSSジャン当てて、この秋の主役を独り占めしたい。家に帰って、cellophane『Balloon Songs』を聞いた。元カーネーション棚谷さんプロデュース。とても好きな感じのサウンドで、なんで今まで聞いてこなかったのだろう・・・となっています



土曜日。どうにも風邪をひいてしまった気がする。季節の変わり目、とりわけ夏から秋に移行時はいつも誇り高く風邪をひく。神宮球場にスワローズ寺島の一軍初登板を観に行こうと思っていたのだけど、家で安静にしていることにした。寺島のピッチングはテレビで観た。5失点とホロ苦デビューとなってしまったが、ストレートの球質やマウンドでの佇まいに大器の片鱗は覗かせてくれた。来季が楽しみである。もう今日は一歩も出ないぞ、と決めてお昼も袋ラーメンで済ました。東洋水産の「マルちゃん正麺」の醤油味に、キャベツ炒めを添えて。「サッポロ一番」至上主義の気持ちもわからないでもないが、やはり進化の果ての「マルちゃん正麺」が1番旨い。これは未来の袋ラーメンだ。そして、ひたすらに『ドラクエV』に勤しむ。律儀にも「ゲームは土日しかやらない」というルールを自分に課している。幼い頃のように「ゲームは1日1時間まで」のような制限を設けたほうがゲームは俄然魅力を増しやしないか。1週間ブランクが空くので、冒険のモチベーションを保つのが大変だが、どうにかなりそうなほどドラクエは楽しいので、問題なし。
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とうとう前回のプレイでは果たせなかった主人公の結婚イベントもこなした。あそこでフローラを選ぶなんて鬼畜っぷりは発揮できないが、結婚前のビアンカ

これでフローラさんと結婚できるね・・・
ヒコ・・・・あのね
ううん、なんでもない

私は大丈夫
一人で生きていくのには慣れてるから・・・

みたいな(台詞はうろ覚え)ステレオタイプな”女”感にもウッとなってしまい、マリッジブルーになった。ピエール(スライムナイト)と結婚してぇよ。堀井雄二さん、もうちょい魅力的に女を書けないものか。『ひよっこ』の最終回、ボロボロ泣いてしまった。15分とは思えぬ濃密さ。最後の最後で、津田寛治が出てきたのが凄くよかった。谷田部家の歌う涙声の「涙くんさよなら」、最高だったな。浜口庫之助のコンピレーション盤欲しくなる。『ドキュメント72時間』の再放送で、有楽町駅にいる靴磨き屋さんの回を観た。靴に金をかけていることを鼻にかけた嫌な感じのやつばかり出てきたが(嫁に買ってもらった皮靴を持ってきた人とかは超よかった)、職人による靴の回復ぶりには目を見張るものがあった。ぜひ磨いてもらいたい!と思うも、職人の高圧的な接客の感じが「・・・絶対無理」と思った。風邪をひいている土曜日なので、ブログの筆致も毒強めでお送りしています。



日曜日。昨日よりはいくぶんかましだが、やはり少し風邪気味。スーパーで食材を買い込み、再び家に引き籠る。サウナに行きたいけど我慢である。この日は『キングオブコント2017』の放送日であった。今年のキングオブコントは雰囲気がよかった。相変わらず審査委員の後ろにはタレント崩れという感じの人達が並んでいたけども。あんなことしてまで客席を映す必要あるのだろうか。大会をまんまとさらっていった”にゃんこスター”にすっかりやられてしまった。
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しかし、賛否両論のようである。自分がつまらないと思ったものを誰かがおもしろいと褒めているのがどうしても気に食わない、という人がとても多い。他のジャンルでもあることだとは思うのだけど、この国のお笑いという文化には特に顕著だ。敷居が低いからだろうか。「シンプルに笑えるのが1番だろ」みたいな言葉で片付けられがちだが、お笑いも成熟した文化なのだ、ということは声を大にしておきたい。「あれがおもしろいとされるなんて気に食わない!」という気持ちはわからないでもないのだけど、歳を重ねてきて「そういう感情は不毛だな」と感じるようになった。にゃんこスターを”おもしろい”と感じる為のコードというのがあるし、逆もまた然り。にゃんこスターを”つまらない”と感じる為のコードをまだ身につけていなかっただけかもしれない。移ろいゆく自分の感性に絶対的な自信は持てない。しかし、今現在「おもしろい!」と感じた感情を記すのは楽しいし、それは誰にも阻害されたくないものです。『欅って、書けない?』で織田奈那が「みんな違ってみんないい」「私は今の自分が好き」と言っていて、ものすごく平凡な言葉なのにグッときてしまった。この日の『欅って、書けない?』は秀逸な回で、「小林化という罠」といったキラーワードが登場。尾関姉の育ちのいい感じと、妹への「私にとって1番かわいいアイドルだよ」という言葉に不覚にも涙ぐんだ。土生ちゃんのカースト融和(守屋、志田、渡邊、織田、斎藤の強烈な”一軍”感!!)の為のモッツァレラチーズゲームもよかった。そして、何より2017年に入って初めてなんじゃないかというくらい平手の表情が柔らかかった。髪を切ったことと、次のシングルのフィーリングが明るかったことが、彼女の精神をいい方向に導いたのでしょうか。




月曜日。風邪が長引き、絶不調。追い打ちをかけるように、乃木坂46から年内で伊藤万理華が卒業との報。あまりにも急で、ショックである。確かに卒業していてもやっていける人材だけども。個人PV「伊藤まりかっと。」が二次使用された「リクポでポ♪」のCMよかったもんな。
youtu.be
妙に脇がかわいい。11月の東京ドーム公演、ダメ元で2日連続で申し込んだら両日当選してしまったので、見納めこようと思う。くるりの新曲「How Can I Do?」をiTunesで購入した。凄くリッチな音楽でとてもよかった。今の気分で聞きたいくるりの15曲を選出したプレイリストを作った。「ふたつの世界」「さよならリグレット」「京都の大学生」「ロックンロールハネムーン」「奇跡」「赤い電車」「リバー」「Birthday」「五月の海」「ハイウェイ」などが入っている。帰宅して、昨夜のにゃんこスターの「リズム縄跳び」を何回も観直してしまった。スーパー三助のピンネタとアンゴラ村長が元組んでいた暇アフタヌーンの漫才をYouTubeで観漁る。どれもおもしろかったが、とりわけ暇アフタヌーンの漫才のおもしろさ。ツッコミの人、むちゃくちゃセンスある。
youtu.be
Aマッソと暇アフタヌーンがいたナベプロ、凄い。ゾフィーのコント、好きだったなぁ。あのネタが炎上しかけたいうのは絶望しかないエピソードだ。敷居が低い分、リテラシーも低すぎる。あと、にゃんこスターが入っていたライブ予定をほぼ全キャンセルした事を、なんか叩かれてるみたいなんですが、多分同調しているのはライブに行ったことない人達だと思う。賞レースで結果出した芸人がテレビなどの仕事で出演予定のライブキャンセルするというのは"あるある"だ。ライブのお客さんは「がんばれよー」という感じでポジティブに受け入れてる。そして、売れた後もたまに出てきたりすると「いいんですか!?」とありがたい気持ちになった。三四郎とかメイプル超合金とか。そもそも、行ったことない人が想像しているのの5倍くらいお笑いライブというのは開催されている。



火曜日。真中監督のラストゲームを観に行く予定だったが、体調が芳しくないので家で観た。ルーキとの契約がもつれ、最終戦なのに姿なし。そして、秋吉が山本に満塁ホームランをくらい大敗。いやーつらい。バレンティンも去年と違ってスワローズ愛を強調せずに帰った。バレンティンもルーキもサヨナラかな。セレモニーでの真中の涙にもらい泣き。あと、顔を真っ赤にしている西田がかわいかった。今年の最大の誤算と言える西田、西浦、谷内の3人がまた打てるようになってくれないと困る。廣岡と奥村のタイムリーは数少ない希望だった。そして、引退と退団の選手が発表された。中でも衝撃は今浪だろう。病気の為、今季限りで引退。大好きな選手だったので残念でならない。代打で登場した時のあの勝負強さ、忘れられない。どこでも守れるし、バンドも巧いし、本当に素晴らしいプレイヤーだった。ベテラン飯原も退団らしい。田中浩康と飯原がヤクルトスワローズからいなくなる日が来ようとは。原泉、中島、徳山あたりの戦力外通告はあまり納得がいかない。確かに褒められた成績ではないが、あそこをクビにして来シーズンのファームは回っていくのだろうか。いよいよ寒くなってきたので、おでんを鍋で暖めて食べたら、口を大火傷してしまった。何年か前に、かき揚げの熱さでできた口内の傷からウィルスが入って大熱を出したことがあるので用心したい。先週の『オードリーのオールナイトニッポン』が妙におもしろかったので、オードリーラジオの仲間のLINEに「いい回だったね」と送信した。最近やたらと『キン肉マン』の話題が出てくるので、中学時代の部活にジェロニモというあだ名の先輩がいたことを思い出した。



水曜日。ここ最近のマイカーネーションブームからの流れで、トッド・ラングレンをずっと聞いている。

ラントザ・バラッド・オブ・トッド・ラングレン

ラントザ・バラッド・オブ・トッド・ラングレン

ハロー・イッツ・ミー(サムシング/エニシング?)

ハロー・イッツ・ミー(サムシング/エニシング?)

ご多分に漏れず、愛聴しているのは『Runt. The Ballad of Todd Rundgren』『Something/Anything?』『魔法使いは真実のスター』の3枚だけなんだけども、この3枚だけで充分過ぎるほど、一生分愛せてしまう。『わろてんか』3話分まとめて観たけど、ちょっとノリきれない。しかし、高橋一生濱田岳が出てくるらしいので、何とか付いていきたいものです。『トットちゃん』はおもしろそうだけども、観るのが面倒くさいので手を出さないでおこう。前枠の『やすらぎの郷』はなんだかんだ最後まで観てしまった。ラストの妻を失ったことを再認識する石坂浩二の孤独にゾッとした。やすらぎの郷みたいな場所に入ることができない我々はどうすればいいのだ。帰宅して『おじゃMAP』観て感動した。SMAPが2人以上いると、グッと画がもつ。スカートのメジャーデビューアルバムからのリード曲「視界良好」、めちゃいい曲だ。
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にゃんこスター「リズム縄跳び」の衝撃

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かまいたちさらば青春の光の熱戦は実に見応えがあった。さらば青春の光の森田にはブルースがある。売れて欲しいけど、売れない悲哀がより彼らをおもしろくしていきそうで、複雑な心持ちだ。しかし、あれだけ売れっ子であるアンガールズがルーザーの視点を持ち続けているのにはグッときてしまうではないか。2本目の「こんな人間がいたことを誰かに知って欲しかったんだよぉ」という叫びの切実さは、忘れ難いものがある。ジャングルポケットは昨年よりグッと上質なコントを披露していたし、点数は伸びなかった組も軒並みおもしろかった。個人的にゾフィーとアキナのコントはとても好き。しかし、何はなくとも『キングオブコント2017』の印象は”にゃんこスター”という男女コンビであった。ラディカルでプリミティブで、それでいて抜群にポップな超新星。ずっとこんな新しい衝撃を待っていた、という気分です。コンビ名からルックスや衣装まで全部いい。私たちの”サブカル”という概念が具現化したようなアンゴラ村長のルックスにまずもってグッと来てしまう。おそらくカルチャーへの造詣が深い方なのだろうけども、そういった趣向をこれみよがしにネタに落とし込むわけでないのがいい。コントで使用する楽曲が戸川純などでなく、あくまで大塚愛の「さくらんぼ」というのが賢いし、開けている。あれでPerfume椎名林檎あたりの楽曲を使っていたら、どっちらけなのである。


スーパー三助もアンゴラ村長もどこかで見たことがある”誰かの偽者”のようなルックス*1なのだけども、コントそのものは唯一無二であるのがクールだ。お笑いを日常的に観ている人ほど、「キングオブコントの決勝であの定石外れのコントを披露する」という現象自体がたまらなくおもしろく感じてしまうだろう。しかし、そういった外枠の力だけに頼ったコントでは決してない。観れば観るほどに、よく練られた一品であるように思えた。
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スーパー三助演じる縄跳び大好き少年が「縄跳びって最高だよね」と大声で叫びながら登場し、リズム縄跳びの発表会の開催に対して、「ボクが観なきゃ誰が観るってんだい!」と、意気揚々と競技の行方に目をこらす。このコントの導入は、『キングオブコント』という大会と、その行方をテレビ越しに見守るお笑い好きの視聴者との関係性がそのままトレースされていやしないか。演目を披露するアンゴラ村長の登場とその華麗な縄跳びさばきに「かわいらしい子が出てきましたよ」「上手だねぇ」と感想を漏らすスーパー三助の存在は、我々視聴者そのものだ。楽曲がサビを迎えるやいなや縄跳びを使わず踊り出すというボケにも同じようにツッコみ、戸惑う。

飛ばなーーーい!
サビで縄跳び、飛ばないですかー!!
なんで飛ばないのよ
サビでそれやったらいいじゃない・・・

その後もスーパー三助は、「リズム縄跳び」というコントに対して私たちが抱く感想をそのまま大声で代弁してくれる。気が付けば、アンゴラ村長の変なダンスにすっかり魅せられてしまった私たちとスーパー三助が、完全に共鳴する瞬間が抜群に心地いい。

あれ!?この動き求めている俺がいる
この動きが頭から離れない
サビが来るっ!
まさか!!?
待ってましたぁ!!!

ここで、それまで”オイラ”や”ボク”といった一人称を使い、少年を演じていたスーパー三助が突如として、”俺”という人称でもって素に戻ったようなそぶりをとるのも見逃せない。あの瞬間のスーパー三助は、完全にコント内の役柄を捨て、”私たち(=視聴者)”と同化しているのだ。


にゃんこスターの「リズム縄跳び」というコントに激しく心動かされてしまうのは、スーパー三助を通して、「価値観の転覆」という革命を、私たちも同時に体験してしまうからに他なるまい。

僕の中のお笑いの方程式がグワーンって変えられましたね


バイきんぐ小峠

これはお笑い界変わる
ちょっと長目にお笑いブーム続いてましたけど
やつらがキングになったらちょっと次の局面に入る気がする


伊集院光

という前振りVTRのコメントにあるように、にゃんこスターのコントは革命である。革命だなんてロッキングオン社のような煽りはできれば使いたくないものだが、実際に革命なのだから仕方あるまい。2本目の「リズムフラフープ」では、神様すらにゃんこスターに翻るのだから。まぁ、確かに荒唐無稽。一部の視聴者からは「お遊戯会かよ」という批判が大量に発生しているようだ。しかし、意識の革命のようなものが、お遊戯会のようにシンプルに楽しく表現されてしまっている、それが何より凄い。「大声を上げているだけ」のような批判は頷けない。スーパー三助の声色やイントネーションの使い分けは、それだけで彼が技巧者であることが窺える。ダンス中のアンゴラ村長の表情なども「それしかない!」というような完璧なおもしろさだし、そもそも縄跳びとフラフープがむちゃくちゃ上手いのすらおもしろい。*2

あぁ!!伝説の縄跳びだっ!
選ばれるわけないよ
選ばれないと抜けないけど
選ばれるわけないっ!

という伝説の縄跳びを巡るくだりも、偶然なのかもしれないが『キングオブコント』というシステムと同調してしまっている。スッポリと抜ける伝説の縄跳び。にゃんこスターは”選ばれた”にも関わらず、それに執着しない。ファイナルラウンドでも1本目と同じネタを連続で演じるという愚行(いや、英断か)に出る。

こっちのほうがいいよね
こっちのほうがいいよ
伝説の縄跳びなんて捨てちゃえよ
こっちでいこう こっちで
最高だよこの動き

「いや、単に他にネタがなかっただけだろ!」というツッコミはさておき。「僕たちのコンビ名はにゃんこスターでしたー」というコントの締めにひどく感動してしまうのは常識の破壊という以外に何か要因がある気がするのだけども、言語化できていない。しばらくの間は頭の中はにゃんこスターでいっぱいになってしまいそうである。

*1:スーパー三助はサカナクション山口とナイツ土屋を足して割ったような、アンゴラ村長は地下アイドルの姫乃たま

*2:あの緊張の舞台で一度もミスらないのが凄いし、おもしろい。