TVK(テレビ神奈川)とGyaoにて放映が開始されたドラマ『デリバリーお姉さんNEO』は必見の作品である。なんたって制作陣が凄い。メインの監督がTHE DIRECTORS FARMの松本壮史(Enjoy Music Club)、脚本は三浦直之(ロロ)と大歳倫弘(ヨーロッパ企画)!!更に劇伴&テーマ曲は江本祐介(Enjoy Music Club)、オープニングアニメーションはサヌキナオヤ!レギュラーに板橋駿谷(ロロ)、1話ゲストには島田桃子(ロロ)と田中佑弥(中野成樹+フランケンズ)。今後もロロ周辺のメンバーが続々と登板予定らしい。なんてワクワクする布陣でしょうか。「いやいや、1人も知らないよ!」という方も勿論いるかもしれない。彼らはポップカルチャー界の新しい波である。停滞気味のテレビドラマに一石を投じてくれるに違いありません。もちろん、ローカル局とネット配信ではありますが、”新しさ”はいつだってアンダーグラウンドからやってくるのです。
だが、その最高傑作が積もり積もったラブレターの海に紛れてしまった。部屋に積もったラブレターの封を1枚ずつ開け、読み上げ、最高傑作の1枚を探し出すのが、今回のデリバリーお姉さんの任務というわけだ。なんてロマンチック!ラブレターの対象である”ヒコ”*1という人物の輪郭が、手紙の音読によってゆっくりと浮かび上がっていく。ここらへんの描写の豊かさもまさに三浦直之の本領発揮。少しの間だけ敬語で話すね、の素晴らしさ。そして、当然と言えば当然なのだが、その最高傑作のラブレターは読み上げられることはない。想いというのは消えることなく、”今”、発される言葉に積み重なっていく。であるから、取り繕わない生の言葉を発しさえすれば、届く人にはしっかりと響く(ここで、序盤のマコの就活の履歴書の挿話が効いてくる)。しかし、書かれたラブレターもまた決して無駄にはならない。マコの拍子抜けのくしゃみが風を巻き起こし、部屋に積もっていたラブレターの屑をまき散らす。その紙吹雪は、告白を為さんとする2人の元に舞い踊る。これまでに発生したかつての”好き”の気持ちが、今まさに発されようとしている”好き”を祝福する。三浦メソッドの完璧な映像化である。ともさかりえの2ndシングル「くしゃみ」も想起した。歌い出しはこう→「風が吹けば/誰かがくしゃみする/彼女とあの人が/どうやら LOVE LOVE らしいって」
木曜日。疲れが溜まっていたので、自転車に乗ってちょっと離れた板橋「クアパレス藤」へ。住宅街によくあるビル型の銭湯なのですが、ここのサウナは文句なしに素晴らしいのです。仁丹もしくは檜のような心地よい香料が入った袋がサウナ内にぶら下がっていて、それが実に気分をリラックスさせてくれる。サウナ利用者には敷きマットと凍ったミネラルウォーターをつけてくれるのも心憎い。サウナ自体も良質で、110℃近い高温&高湿。入るなり汗がすぐさまダラダラと流れる。テレビはなく、有線放送だろうか小さな音で90年代のJ-POPが流れているのもいい。いつも何が聞けるか楽しみなのだけど、この日の収穫は小沢健二「大人になればと」とB’z「ねがい」でありました。「大人になれば」のイントロには思わず声が漏れてしまった。いっつも聞いてんだけども、これがサウナとなると又格別なのよ。「ねがい」もイントロで涙腺が緩む。『B'z The Best "Pleasure"』と『B'z The Best "Treasure"』という1998年に2枚同時リリースされたベスト盤、いとこに借りて、MDに落としてむちゃくちゃ聞いていたのを思い出した。たしか中学1年生だった。この頃はラルクもグレイもみんな複数枚同時リリースに凝っていたものだ。『ark』と『ray』もやっぱりいとこに借りた気がする。サウナ上がりは無性にラーメンが食べたくなるものです。この周辺に「愚直」というラーメン界で絶大な評価を得ているとんこつラーメン屋があるのだけども、看板がない上に営業時間や定休日に癖があって、開店しているのすら未だに観たことがない。今日こそは食べるぞ、と意気込むもやはり閉まっていた。月曜日と木曜日が定休日で、更に夜は20:00からの営業らしい。癖あるなー。気持ちを切り替えて上板橋に移動。「魂の中華そば」でつけ麺を食べた。ふざけた店名だが、ここも名店なのだ。凄く美味しかったのだけども、サウナの後に食べたいのはとんこつとか家系のようなガッツリなラーメンだったな。帰宅して、録画してあった『バナおぎやドリーのもろもろのハナシ』を観る。4月からレギュラー放送が始まった新番組だが、しみじみおもしろい。働き出してからラジオを聞く余裕がすっかりなくなってしまったので、テレビでこれが聞けるのはうれしい。あと、みんなとてもオシャレな衣装を着ていてかっこいいです。同じく新番組のアルコ&ピースの『勇者ああああ』も凄く好き。痩せた酒井ちゃんにやっと慣れてきました。
『彼女が死んじゃった』は『すいか』と『池袋ウエストゲートパーク』以降という感じの2004年に放映されていた日テレのドラマ。一晩かぎりの関係を結んだ女性の自殺の真相を追うべく、彼女の携帯のメモリーに登録された人を訪ねていくというロードムービー。実に90年代的なテーマでさすがに気恥ずかしさを覚えてしまったのも正直なところだが、これがなかなか良かった。視聴率は惨敗だったようだが、カルト的人気を誇っているのも頷ける。『逃げ恥』の脚本家の野木亜紀子が大ファンというので、観てみました。若き長瀬智也もいいが、何といっても木村佳乃が素晴らしかった。しかし、どうして日テレのドラマはルックが垢抜けないのだろう。プロ野球の中継を眺めた後(小川のアウトローと雨天中止コールド)、一晩中Netflixで湯浅政明『ピンポン THE ANIMATION』を観た。
改めて、抜群におもしろい。大傑作。原作より好きかもしれない。松本大洋の書く台詞というのは全てが全てスタイリッシュだ。10代の頃、あれらの台詞廻しにどれほど打ちのめされたことか。体育の卓球の時間、死ぬほど真似していた。「また連れてきてくれるか」「ここはいい」「少し泣く」「風間さんに言わせりゃ、そうでしょうね」「むろん、自分の為」など、やはり風間とアクマの台詞は凡庸性が高い。特にお気に入りのペコが自分の膝に問いかけるシーンがアニメではカットされていたのが残念だ。OP曲の爆弾ジョニー「唯1人」を聞きすぎて、好きになってしまった。青春パンクみたいだけども、よく聞くと大木兄弟感がある。この日はレコードストアデイということで、Enjoy Music Club『100%未来/そんな夜』の7インチがリリースされました。ライナーノーツを書かせて頂いたのですが、印刷された現物にジンワリ感動してしまいました。ボブa.k.aえんちゃんによる両面のジャケットも最高にキュートで、これは宝物です!
ここ10年のマッキーに正直好きなアルバムはないのだが、今作はなかなかの佳曲揃いだと思う。過去のライブレポなどに目を通してみると、前回のツアーで「僕の彼女はウエイトレス」「雷が鳴る前に」「この傘をたためば」「DARLING」「君の自転車」など90年代のアルバム(『君が笑うとき君の胸が痛まないように』から『Cicada』まで)の楽曲を惜しみなく披露していたらしい。「THE END OF THE WORLD」を演奏した公演もあるそうな!!死ぬほど聞きたかった。全曲イントロで泣いてしまう自信がある。なんでも前回のツアーあたりから90年代のナンバーがかなり解禁されてきているらしい。
欅坂46の織田奈那。彼女の愛称である”オダナナ”はあだ名ではなく、フルネームである。オダナナ、オダナナ、オダナナ。思わず名前を3回唱えたくなるほどに素晴らしい響き、収まり。Enjoy Music Clubの誇る映像ファンタジスタ松本壮史は、彼女のネーミングに宿るそのチャームに目をつけ、「名前を呼んで」という素晴らしい短編ドラマを作り上げてしまった。欅坂46の4thシングル『不協和音』の初回限定D盤に収録された個人PVの一作なのだが、贔屓目抜きにしても、ぶっちぎりでNo.1の出来栄えではないでしょうか。ちなみに、松本壮史は乃木坂46の個人PVにおいても、桜井玲香と共に『アイラブユー』という傑作を提出済みだ。
この『コールミー』には、少女が踊り出さずにはいられない理由みたいなものが完璧に映像に焼き付いている。恋する乙女の心情を、指の先の先まで表出させてしまう島田桃子(ロロ)による振付の見事さ。織田奈那が口ずさむ劇中歌は江本祐介(Enjoy Music Club)のペンだ。この楽曲がまた素晴らしい。
席順あいうえお 名前を呼んで
あと何回かな
春が来ちゃう その前に
いつものように 名前を呼んで
想いを寄せる先生に、出欠確認で名前を呼んでもらう。そんな小さなドラマに秘められた女生徒の恋心が、切なく爆発するナイアガラなアイドル歌謡だ。かつての歌謡界を席巻した大瀧詠一&松本隆と松田聖子の幸せな関係が、2017年において、欅坂46とEnjoy Music Clubとの間で結ばれた。全てのポップミュージックファンに聞いて頂きたいものだ。更に、江本祐介は役者としても今作に出演を果たしているのだけども、意外や意外(と言っては失礼だが)、好演を見せている。