青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

大石静『しあわせの記憶』

f:id:hiko1985:20170111104424j:plain
MBS開局65周年を記念して制作された新春ドラマ『しあわせの記憶』を観た。渡辺謙が出ているなら、というくらいの軽い気持ちで眺めていたのだけども、気付けば完全に魅了されてしまった。まずもって役者陣がいい。渡辺謙の屈強さと軽みは言わずもがな、北川景子の衒いのない美しさは観ていて大変気持ちがよく、二階堂ふみは声を荒げることなく高い演技力を見せつける。一体何から身を守ろうというのか、常にリュックを前掛けする丸まった背中の出で立ちは、染谷将太と並んでこの世代の代弁者と言っていいだろう(それって『ヒミズ』ではないか)。2人の娘に負けないキュートさを撒き散らしていたのが麻生祐未で、しばらくは世の中の母親役はこの人と斎藤由貴が独占すればいい、と思いました。清掃員として働きながら、孤独にしがない生活を送る渡辺謙ということで、どうしても『星ひとつの夜』(2007)などを想起してしまうわけだが、自分のやりたいことがわからない青年、方向に行き詰る中年、人生のやり直しに挑む老年というトライアングルはやはりどこか山田太一的であった。


勉強不足でして、向田邦子賞を始めとしたテレビドラマ界の権威を総なめにしているベテラン脚本家である大石静の作品をこれまでまともに鑑賞したことがなかったのだが、抜群に”生きた”本を書く人である。冒頭における何やら姉妹であるらしい北川景子二階堂ふみの朝のリビングでの会話から目を見張った。

夏波:おはよう
冬花:カレーなんてあったっけー?
夏波:レトルトよ
冬花:はあ~イチローみたいだね 
   朝からカレーだなんて

夏波:第一線で戦う者はランチの暇なんかないんだから
   朝ご飯はがっつり食べとかなきゃだめなの

冬花:イチローもお昼食べないの?
夏波:イチローは食べるでしょ!アスリートなんだから
冬花:アスリート・・・スポーツ選手でいいのに

おもしろい。ここには生活者としてのリアリティーがあるし、さりげなさの中に作家の持つほどよいユーモアとシニカルな視線が込められている。そして、自己紹介がわりにという感じで、勤勉な姉、少し抜けた妹といった人となりがスッと視聴者に入ってくるのも巧い。姉妹の衣装や小道具にもそれらが明確に視覚化されている。タイトで滑らかな質感の服を纏う社長の姉とオーバーサイズのスウェットを上か下に必ず身につけるフリーターの妹。芸が細かいと感じたのは、玄関のショットが挿入されると、必ずナイキやニューバランスのスニーカーが入船のまま置かれた様子が写り込んでいる点。おそらくそれは妹の靴で、母や夏波の靴はきちんと出船に揃えてある。5年ぶりに家に舞い戻った父は脱ぎっ放しで玄関を上がる。姉は母似、妹は父似なのだろうか。こういった登場人物や小道具を余す所なく使う脚本術が見事なのだ。とりわけ夫婦の出会いであったというプロ野球観戦を巡る挿話が素晴らしかった。

太郎:すごかったよなぁ、5万だぜ神宮。
純子:うん
太郎:掛布のホームランに佐野の犠牲フライだ
   あの日出会ってなけりゃ夏も冬もこの世には存在しなかった
   不思議だよな、偶然知り合って好きになって家族になって

人生の途方もない偶然性、クサい言葉で処理すれば”奇跡”というやつを、去る日のプロ野球の1試合で語る。そして、この会話を導き出したタイガースのメガホンは、別々の道を辿ることになる夫から妻へのエールに使用されるのだ!この照れと攻めのケレンミ。ジャガイモの皮を剥きながら「玉葱が目に沁みる」と泣く、なんてズラしも心憎い。


家族とは何か?を定義するのはどうしてかテレビドラマ界が背負う宿命のようなものだが、本作は”記憶”である、とした。

親孝行ってのはな 何も年とってからだけじゃねぇんだ
最初の5年間で一生分の忘れらんねぇぐれぇの思い出、くれんだよ

記憶なんだなぁ家族って
子どもが育ってしまえばいずれみんなバラバラになってしまう
でもみんなの記憶の中で家族は生きてんだ

どこか藤子・F・不二雄の『ドラえもん』の傑作中編「のび太結婚前夜」における静香のパパの台詞を引き継ぐような筆致だ。

それからの毎日、楽しかった日、みちたりた日々の思い出こそ
きみからの最高の贈り物だったんだよ
少しぐらいさびしくても、思い出があたためてくれるさ

たとえ家族であろうと、いずれ離ればなれになる。人はどこまでいこうと孤独だ。しかし、記憶が孤独を温めてくれる、そっと背中を押してくれる。そんな家族の”記憶”というやつが実体化してしまうシーンがある。信号の灯りがどこか幻想的な夜道を、疲弊した夏波がトボトボと歩いている。突如現れるボウリング場に導かれるように入店してしまう。そこは何故だか照明は薄暗く、お客はおろか従業員も誰1人といない。しかし、何故か父がいる。無人のボウリング場で勝負をする父と娘。異様だが、どこか温かい。あのまるで夢のような質感のボウリング場は、家族の記憶、思い出そのものが具現化した空間なのである。

伏原健之『人生フルーツ』

f:id:hiko1985:20170110162932j:plain
カメラに収められているのは名古屋のベッドタウンに居を構える90歳と87歳の老夫婦の暮らしぶりだ。夫は多摩平団地、高根台団地、阿佐ヶ谷住宅高蔵寺ニュータウンなど、戦後日本の住処を形づくってきた建築家の津端修一。妻は『あしたも、こはるびより。』といった著作で知られる津端英子。

合わせて177歳

このフレーズは夫婦が好んで使用しているものだが、「2人で1つの生き物」というような修一と英子の離れ難い魂の結びつきを端的に表現しているように思うし、この映画の最も感動的なポイントはやはり2人の結びつきの強さだ。


津端夫婦に、ジブリ映画的ファンタジーを身体に落とし込んで生活している人、という印象を覚えた。その証左というわけではないが、この映画には常に”風”が流れている。この風通りの良さというのは、津端が建築家としてこだわり続けてきた一面であり、それはすなわち”見通しの良さ”とも言い換えられる、彼の人生哲学の骨格でもある。90という高齢でありながらも、常に春を待ちわびる津端の姿勢には胸打たれるものがある。
f:id:hiko1985:20170110163041j:plain
雑木林に囲まれた木造平屋で、野菜や果実を育みながら豊かに暮らす177歳に、東海テレビのカメラはじっと寄り添う。庭を眺める、土を耕す、朝食に海苔を焼く、パンに自家製のジャムを塗る、ベーコンを2時間かけて燻る、野良猫の羨望を浴びる魚の干物を吊るす、40年使い続ける土鍋でシチューを煮る、苺たっぷりのケーキを焼く、障子を丁寧に張り替える、美味しい刺身を売ってくれた魚屋へイラスト付きの手紙を書くetc・・・そこに映し出される所作一つ一つは”生きること”の慈しみに溢れており、観る者の目を捉えて離さないだろう。庭から収穫される色とりどりの作物も目に楽しい。そんな2人の暮らしぶりをして、”スローライフ”という言葉で切り捨ててしまうのには簡単だが、それはあまりにも貧しい。確かに、優雅な年金暮らしに支えられた300坪の土地でキッチンガーデンというのは、現代においては一種のおとぎ話。叶えられぬ理想、みたいなもの。しかし、津端夫婦に宿る美しさは、そういった”スローライフ”的な豊かさにあるわけではない。それは、長い生涯において美学を貫き通した果てに放たれる崇高さのようなものだ。津端修一の建築家としての歩みは決して順風満帆ではなかった。代表作に挙げられる高蔵寺ニュータウンにしても、当初の「地形の記憶を留める」という津端の思想は、経済至上主義によって打ち破られる。山は削られ、谷は埋められた。しかし、津端は敗北者ではあり続けない。理想と遠く離れてしまったそのニュータウンの一角に土地を購入し、自らの実践をして、里山再生のロールモデルを提唱し続けた。更に「ドングリ作戦」と称し、ニュータウン開発によってハゲ山となってしまった高森山に樹木を植える運動を敢行。長い年月をかけて、見事に山を再生させてみせる。こういった側面をすれば、津端はスローライフを実践するただの好々爺ではあるまい。システムや体制に強い意志で逆らってみせるアナーキストなのである。津端夫婦の生きように目をこらしていると、

青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ

というサミュエル・ウルマンの詩が想い起こされる。177歳の青春、それがこのフィルムに瑞々しく刻まれているものである。

最近のこと(年末年始)

あけましておめでとうございます。年末年始の休暇の為に1年間を過ごしていると言っても過言ではないというのに、風のように過ぎ去ってしまった。今、我々は年末年始から1番遠い場所にいるのだ、と思うと涙が零れそうではありませんか。絶対に迎えに行くから、という気持ち。2週間近く「最近のこと」を書きそびれていて、書き始めるのが大変億劫である。しかし、年末年始の出来事は記録しておきたい。後で読み返して思い出したいから。



12月の26日は『SMAP×SMAP』の最終回を観てメソメソ泣く。何はなくとも中居さんだ、と思った。哀しいけども、スマスマスタッフのアーカイブ素材のチョイスと編集に感動。あの最終回が体現していたのはSMAPの青春だ。複雑な感情に包まれ、眠れる気がしないので、ブログに想いをぶちまけた。
hiko1985.hatenablog.com
このエントリーを『ゴッドタン』の佐久間Pと『水曜日のダウンタウン』の藤井Pがリツイートしてくださって、凄くうれしかったのです。SMAPは私にとってのポップカルチャーのはじまり。それが2016年のポップルカルチャーの最先端に繋がった、という気持ちでした。27日は年内の仕事を納めて、東中野へ。「大盛軒」で鉄板麺を食らい、ポレポレで濱口竜平の新作短編『天国はまだ遠い』を観た。まさかの幽霊モノ。傑作である。女優2人がとてもよかった。帰宅して荷造り。



28日から29日にかけて、「サウナしきじ」と「炭焼きレストランさわやか」を堪能する旅を敢行した。2016年ラストサウナを堪能すべく、2日間とも「サウナしきじ」に入り浸った。
f:id:hiko1985:20161228150811j:plain
富士の天然湧水で構成されたそのあまりにも柔らかい水風呂に浸かりながら、「水風呂とは温度ではなく水質なのだ」と師走のさ中に改めて唸る。しきじの水風呂に浸かると、生まれたくなる。薬草サウナもたまらなく好きだ。薬草風呂も好きだ。ハァ、しきじはほんとサイコー。「サウナしきじ」に通う著名人として名を馳せるのがオリエンタルラジオの藤森慎吾さん。ウエンツ瑛二やシソンヌ長谷川忍などを引き連れて来るらしい。藤森慎吾さん、パーフェクトサウナーだけあって、本当に肌ツルツルですよね。そして、最近異常に”華”がある。藤森師匠オススメのまぐろ丼専門店「清水港 みなみ」も訪れた。行列店だが、昼過ぎに行ったら、比較的スムーズに入店できました。とは言え、看板メニューには売り切れが多し。注文したのは鮪まかない丼。
f:id:hiko1985:20161228132528j:plain
漬け鮪、ネギトロ、炙りの3種が楽しめます。飛び抜けて美味いわけでもないが、それなりにリーズナブルで満足。「炭焼きレストランさわやか」は年末だろうと何だろうと激混みでありました。余裕で1~2時間を待たすファミレスである。しかし、あの炭焼きハンバーグにはその価値があるのだから悔しい。
f:id:hiko1985:20161228194828j:plain
アホほど美味い。さわやかは待たしに待たすが、店員のホスピタリティーレベルは非常に高いように感じる。注文を聞きに来るタイミングとか水のおかわりの頻度とかアイス珈琲の器とか、そういった些細なことなのですが全部が良いのだよな。さわやかの待ち時間に思わず眼鏡を作ってしまった。べっ甲フレームで丸型少しの大き目レンズで、それはもうクラシックな佇まいなのです。旅先で眼鏡を作るのもまた一興。宿泊先でテレビをつけたら『Aマッソのゲラニチョビ』の地上波放送が。うれしい。
f:id:hiko1985:20170111172957j:plain
しきじの近くには登呂遺跡があるらしい。小さい頃、考古学者に憧れていて、やたらと遺跡に行きたがったものだ。しかし、遺跡というのはいざ訪れてみると、幼心では感じ取れない渋さによって支えられた観光地だと気付くことだろう。いつもガッカリしたものだ。なんかもっとこうマンモスの骨とか原始人に会えると思っていたんだよな。ちなみに考古学への憧れは中学時代に『マスターキートン

MASTERキートン (13) (ビッグコミックス)

MASTERキートン (13) (ビッグコミックス)

を愛読する事で再び膨れ上がりました。



30日はテレビ録画の消化につとめる。『クイズ正解は一年後』は本当にひれ伏すほど面白い。特に何とも思っていなかったマスパンが私の中で急に超絶かわいい。『有吉の壁』も相変わらず楽しい。Huluで過去回も観直したのだけども、チョコレートプラネットの2人とトレンディ―エンジェルたかしがいつも高打率で素晴らしい。久方ぶりの『新しい波』も楽しめた。全組見ごたえがあったが、中でも四千頭身というトリオ漫才師に心射抜かれました。ワタナベ所属らしいので、Aマッソの後輩かしら。『乃木坂工事中』での乃木坂+欅坂合同特番、気が付いたら欅坂に肩入れしている自分がいる。ワンマンライブを観てからというもの完全に気持ちを持っていかれているのです。表紙&特集の『B.L.T.』と『クイックジャパン』も購入してしまった。

『B.L.T.』のインタビューでぺーちゃんが30歳まで欅坂を続けると言っているのグッときたし、信じたい。てちねるも、誰か1人でも卒業するなら解散したい、とまで言ってのけていて、最高でした。海外ドラマの『高い城の男』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ヒップホップエボリューション』などに手をつけ始めて、頭の中が混乱している。夜は友人らと忘年会。池袋に新しくできた鳥料理の居酒屋へ。美味くはなかった。「こんばんわー!星野源で~~~す」をいかに上手く言えるかを競い合いました。大好きな年末が残り1日しかないことに焦りを覚える。



31日。大晦日。新宿のロイホでランチした。ロイヤルカレーは美味しい(あまりに割高だが)。毎年、31日は大いに買い物をすると決めていて、今年も日用品をあれこれ買い直したり、買い足したり。加湿器とかバスマットとかキッチンマットとかトイレマットとか枕とかベットシーツとか。珪藻土のバスマットをついに購入したのですが、これは素晴らしいですね。

信じられない吸水力、速乾性。しかも衛生的。毛足のあるバスマットの掃除とか洗濯のタイミングを伺うのにウンザリしていたので、ありがたい。有名なsoilのは高いですが、安価な物でも充分その価値を堪能できます。キッチンマットやトイレマットは手近なイオンやイートーヨーカ堂を観て回ったのだけど、デザイン、料金含め断然後者に軍配が上がる。オススメです。デパートで生蕎麦や海老天、すき焼き用の牛肉や野菜などを購入して帰宅。ハーゲンダッツのアイスも買った。紅白を観ながらすきやき鍋をつつく至福ときたら。紅白は茶番のキレもなく、相葉ちゃんと有村架純の司会もグダグダで(脚本もあまりにひどい)、近年稀に見る低調具合でした。2015年の紅白は最高だったのにな。相葉ちゃんのスーツがあずぎバ―みたいだったのは面白かったけども。イエモンの「JAM」と星野源「恋」が良かったです。申し訳程度に恋ダンスを披露するガッキ―の事を、私はずっと忘れないでしょう。すき焼きでお腹いっぱいになってしまい、年越し蕎麦は翌朝に回した。2016年も楽しい年だった。



年始です。まずい、もう書くのが面倒くさくなってしまった。まぁ、家でテレビ観たり、親族の新年会に参加したりとかですね。焼き肉とか蟹とか食べました。今まで食べた蟹の中で1番美味しかったな。年始のテレビは『富士ファミリー2017』と『しあわせの記憶』の新春ドラマ2本が感動的で、『キングちゃん』と『ゴッドタン』のマジ歌が大変おもしろく腹が捩れました。あと、『水曜どうでしょう』のDVDを時系列順にコツコツと観ていて、すごく楽しいです。

『サイコロ3~自律神経完全破壊~』で大泉さんがバスで「ヤスケン、酔っぱらっちゃったよ~」と、その場にいるでもない当時まだ無名の友人の名前を叫ぶの青春過ぎて最高だ。かわいすぎる。草なぎさんが逮捕された時「慎吾~」って叫んでいたのに通ずる。『うたばん』に大泉洋が出た回、もう一度観たい。衝撃的にトークが面白かった記憶があるのだけど。ネットに落ちているだろうか。石橋貴明大泉洋は実は喋りのトーンがどこか似ている。
本日のスープ

本日のスープ

「本日のスープ」は名曲&名唄過ぎるので、当時買いましたね。



3連休はのんびりと過ごした。土曜日はポレポレ東中野で『人生フルーツ』を観る。
hiko1985.hatenablog.com
傑作。3回くらい泣いてしまった。阿佐ヶ谷住宅を作った人があんなに素敵な人だったとは。しばらく、団地とニュータウンに関する本を読み漁りたい。手始めに石山さやか『サザンウィンドウ・サザンドア』を購入しました。

サザンウィンドウ・サザンドア (フィールコミックス)

サザンウィンドウ・サザンドア (フィールコミックス)

表紙がまずもって素晴らしい。あと、2017年は原点に立ちかえろうと、大島弓子穂村弘を読み直している。来週はホセ・ルイス・ゲリン特集を観に、恵比寿に遊びに行きたいな。新作は勿論、『影の列車』と『シルヴィアのいる街で』をもう一度スクリーンで観たい。



日曜日は実家引越の為、荷物の整理をしに行こうと思っていたのだが、雨が降るらしいのので止める。年始初サウナとして、近所の銭湯へ。散歩をしていたら見つけた初めて行く銭湯なのだが、日曜日は朝から営業している。しかも、天然地下水を使用しているらしく、水風呂もいい。温度も銭湯にしては珍しくアンダ―20度。大変助かります。ここはこれから通ってしまいそうだ。銭湯の帰りに、パン屋でコロッケパンを買って歩き食べ。これぞ、幸せである。家に籠もり、『ゲーム・オブ・スローンズ』と『水曜どうでしょう』を観漁った。面白過ぎる。これも、幸せである。スーパーに買い出しに行き、夜ご飯は玉葱たっぷりのビーフカレーを食べた。明日が休みなので、リアルタイムで『乃木坂工事中』と『欅って書けない』が観られてうれしい。特番の未公開で、平手VS生駒、桜井VS菅井、渡辺(梨)VS白石、という完璧な対決があって、なんでこれが未公開なのか。ここ最近のキャップが以前のように元気な笑顔を見せていて、大変うれしい。ずっと血色が悪かったので、心配でした。



月曜日。3連休最終日だが、寝坊。妹がギャングに誘拐される、という夢を観た。現場に駆け付けると、発砲された。夢だからか、痛みは感じませんでした。夢に結末はない。引き続き、『ゲーム・オブ・スローンズ』を観る。取り憑かれてしまった。自転車で「さやの湯処」に出掛けて、2日連続サウナ。むちゃんこ混んでいた。いまいち気持ち良くなりきれず。サウナを出て、板橋の至宝「吉祥軒」で夜ご飯。
f:id:hiko1985:20170109200017j:plain
f:id:hiko1985:20170109195650j:plain
エビカレー炒飯なるいかにもパーフェクトなメニューを初めて頼んで観たのですが、たいへん美味かった。豚肉とニンニクの芽炒めも、これ芸術。「吉祥軒」の炒飯をみんなに喰わしてやりたい。『KEYABINGO2』開始うれし。ヨネとねるの友情にグッとくる。偽善者ぶらなかったヨネが、凄いと思った。ヤクルトの杉浦がコンコンと結婚。相思相愛がいいですね。
youtu.be

木皿泉『富士ファミリー2017』

f:id:hiko1985:20160724152736j:plain

洗いたてのコップみたいな夜か
生まれ変わろうかな

こんな宝石みたいな台詞が当たり前のようにポンポンと飛び出してくるのだからたまらない。木皿泉の作品をして「あまりに誰もが誰もいい台詞を吐き過ぎる」といった批判があるのは理解できなくはないのだけども、まさに命を削って絞り出しているような強度を持った台詞の数々を前にしては、ただひれ伏すしかあるまい。これが木皿作品を観る喜びなのだ、と『富士ファミリー2017』を新年早々、瞳を濡らしながら堪能した。


富士山の麓に構える古びた商店(自称コンビニ)を舞台としたほのぼの人情コメディードラマ。でありながらも、幽霊や吸血鬼やアンドロイドが当たり前のようにその世界に介在している。その有様が、すでにして”生”もしくは”ここにいること”をおおらかに肯定しているようである。また、生活する人々への賛歌でありながら、ここにもう”いない”者達への温かい眼差しが作品に通底しているように思う。そんな甘くファンタジックな筆致でもって、「生まれ変わる」という言葉が持つ“輪廻転生”と”人生のやり直し” というダブルミーニングを同時にマルっと描く事に成功している。「おはぎちょーだい」という合言葉をもとに、人々が足早に肯定されていき、いとも簡単に他人と他人が繋がっていく。コンビニ「富士ファミリー」では、血の繫がりなんてなんら関係ないというような態度で、他人同士が家族のように結びつき同居している。冒頭から何の説明もなく、当たり前のようにそこにいるぷりお(東出昌大)が素晴らしかった。背がデカい→ぷりお(=デカプリオ)、って。


俺はたとえ世間を敵にしても信じたいものを信じていくよ

という雅男(高橋克実)の劇中の台詞が今作のコアであろう。そして、それは2016年の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』と似通ったフィーリングを携えている。*1『逃げ恥』というドラマを体現しているかのような星野源による主題歌「恋」からの一節。

恋せずにいられないな
似た顔も虚構にも
愛が生まれるのは一人から

同性愛や自己愛もしくは偶像への愛、そういった様々な種類の愛を全肯定するこの楽曲の態度は、今作にもそのまま適用されよう。クラスの嫌われ者であろうと大地はゴウ君が好きだし、百合さん(小倉一郎)がいい歳してコスプレが趣味でもかまわないではないか。同じくコスプレイヤーの愛子(仲里依紗)がゲームのキャラクター”眠り剣士熟野睡ノ介”に向ける愛情は本物のはずだ。同性愛も(プリオと教授の関係性はそこはとなくそれを匂わせる)、熟年結婚も、再婚も、歳の差婚も全ては許される。誰にも阻害されることはない。好きは好きでいいのだ。そして、これは木皿泉がこれまで作品を通して唱え続けてきた現代を生きていく上での福音である。

あいつは俺より偉いと思ったからだ
堂々と人間じゃないものが好きだと言えるあいつがさ・・・


Q10

人間が人間だけを愛さなくてはいけない理由などない。ロボットに、漫画のキャラクターに、電柱に、牛乳瓶の蓋に・・・と”普通”とは少し違う形で発生する恋や愛を全面的に支持し続けてきた作家が木皿泉である。

一心に空を見上げていたので、声をかけそびれた
ロボは、ダイヤモンドで出来た星みたいだと思った
どんなものでも、 きっとロボを傷つけることは出来ないだろう


セクシーボイスアンドロボ

そんな木皿泉という作家の核を形成したのは、ほかならぬ大島弓子であろう(そして、大島弓子の存在こそが木皿作品と『逃げ恥』を結び付ける鍵だ)。幽霊のナスミ(小泉今日子)という存在がまずもって、どこまでも大島弓子的なのだけども、今回最もハッとさせられるのは、「大晦日に自分は死ぬかもしれない」と悟った鷹子(薬師丸ひろ子)が、旦那の顔や頭、実家のコンビニの商品1つ1つを慈しむように撫で回した、その所作だろう。大島弓子の傑作短編『ローズティーセレモニー』

四月怪談 (白泉社文庫)

四月怪談 (白泉社文庫)

における死期を悟った田谷高太郎によるあの”暗闇のひとつひとつの接吻”からの影響が明確に感じられる。木皿泉ほど大島弓子を物語の血肉に落とし込んでいる作家はそうそうおるまい。


そして、本作(と言うよりも木皿泉という作家)の核を大島弓子とは別にもう1つ挙げるのであれば、それは向田邦子に他ならないはず。今作に掲げられた「新春ドラマスペシャル」という響きだけでグッときてしまうではないか。ようは向田邦子×久世光彦だ。今作の目指す頂にはきっと『寺内貫太郎一家』(1974)

寺内貫太郎一家 期間限定スペシャルプライス DVD-BOX1

寺内貫太郎一家 期間限定スペシャルプライス DVD-BOX1

といった往年のホームドラマがあるはず。それは『寺内貫太郎一家』における樹木希林の老けメイクを彷彿とさせる片桐はいりの笑子バアさん、という形ではっきりとオマージュが捧げられている。しかし、木皿作品において、寺内貫太郎のような厳格な父像というのは面白いほどに登場しない。決まって父は不在かもしくは優男である。コミュニティの中心にいるのはえてして女性。木皿泉が、父性なき現代という時代のホームドラマを再構築するのである。



関連エントリー
hiko1985.hatenablog.com
hiko1985.hatenablog.com
hiko1985.hatenablog.com

*1:"呪い"というワードしかり

2016 BEST MOVIES 20

1.片渕須直この世界の片隅に

f:id:hiko1985:20161223162715j:plain

2.ジャン・ゴンジェ『ひと夏のファンタジア』

f:id:hiko1985:20161230162756p:plain

3.クリント・イーストウッドハドソン川の奇跡

f:id:hiko1985:20161223162747j:plain

4.黒沢清『クリーピー 偽りの隣人』

f:id:hiko1985:20161230162941j:plain

5.リッチ・ムーア/バイロン・ハワード『ズートピア

f:id:hiko1985:20161223162813j:plain

6.ロン・ハワードザ・ビートルズ ~Eight Days A Week』

f:id:hiko1985:20160923122358j:plain

7.岩井俊二リップヴァンウィンクルの花嫁』

f:id:hiko1985:20161230163134j:plain

8.スティーブン・スピルバーグブリッジ・オブ・スパイ

f:id:hiko1985:20161230163315j:plain

9.鈴木卓爾『ジョギング渡り鳥』

f:id:hiko1985:20161230163400j:plain

10.リチャード・リンクレイタ―『エビバディ・ウォンツ・サム!』

f:id:hiko1985:20161230163558j:plain

11.新海誠君の名は。

f:id:hiko1985:20161206105704j:plain

12.黒沢清『ダゲレオタイプの女』

f:id:hiko1985:20161230163930j:plain

13.ロバート・ゼメキスザ・ウォーク』 

f:id:hiko1985:20161230164030j:plain

14.是枝裕和『海よりもまだ深く』

f:id:hiko1985:20161230164121j:plain

15.ジェームズ・ワン死霊館 エンフィールド事件』

f:id:hiko1985:20161230164204j:plain

16.ジョン・ワッツ『COP CAR コップ・カー』

f:id:hiko1985:20161230164404j:plain

17.トッド・ヘインズ『キャロル』

f:id:hiko1985:20161230164459j:plain

18.村川透『さらばあぶない刑事

f:id:hiko1985:20161230164604p:plain

19.ダン・トラクテンバーグ『10 クローバーフィールド・レーン

f:id:hiko1985:20161230164806j:plain

20.デヴィッド・ロバート・ミッチェル『イット・フォローズ』

f:id:hiko1985:20161230165015j:plain

 ドーン。これがマイベスト20本。今年はあれも観なきゃ、これも観なきゃ、というのから解放された気がする。このラインナップに共通するフィーリングなり技法のようなもの、をウンウンと唸りながら探してみたのだけど、巧く見つからず。しかし、「固有であること」と「大衆であること」、「明瞭であること」と「不穏であること」、「勇敢であること」と「無謀であること」、など相反するフィーリングが共存したラインナップになったように思う。20本の内、半分くらいは個別エントリーで感想が書いてあると思うので、探して読んでみて下さい。いつか観た映画全てに納得にいく言葉を書き記せるような技量を身につけたいものです。また今年の最後に観た、濱口竜介『天国にはまだ遠い』も30分台の短編ながらベスト級の鮮烈さがありました。

 

また、すいませんでした!「この作品を鑑賞しておきながら、「テレビドラマだから」という理由でこの作品を“2016 BEST MOVIE”に選出しない批評家などがいるものなら、まったくその勇気には感服してしまうだろうな。少年がカメラを掲げ、暗闇の寄る辺なさの中で光や音の交感が描かれる、今作が映画でないならば、何が映画というのか。」というような大変生意気なことを書いておきながら、『ストレンジャー・シングス』を選出しないという愚行をお許し下さい。2016年の文句なしのベストワンはダファー兄弟の『ストレンジャー・シングス』なのですが、テレビドラマという文化を再興させるという意味で、ドラマ枠に入れさせて頂きます。こちら、2016年のテレビドラマベストです。『ちかえもん』『ゆとりですがないか』『徳山大五郎を誰が殺したのか』あたりもグッド。『ハウスオブカード』や『ゲーム・オブ・スローン』『高い城の男』などの海外ドラマはまだ観ている途中なので、ランク外です。いやはや、時間がない。Netflix、Hulu、amazonプライムなどの充実はポップカルチャーラヴァーとしてはうれしい悲鳴なのであります。

 

『ストレンジャー・シングス』

 

『火花』 

 

逃げるは恥だが役に立つ

 

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』

 

『ゲットダウン』

 

 『LOVE』

 

トットてれび

 

『富士ファミリー』